「夙川座」やってます!

オリジナル脚本のオペレッタや、朗読とのコラボ、ポピュラーヴォーカルとのコラボなど、様々な場所、お客様に合わせたコンサート、舞台を企画しています!! 夙川、苦楽園がベースです。 どうぞよろしくおねがいいたします。
2017年08月23日

伊佐山紫文36

 毎年、夏の終わりには喉を痛める。
 冷たいものを飲み過ぎるのもあるし、何より、夏休みで家にいる息子を怒鳴るから。
 あれしろ、これしろ、と、いちいち言わなくてもかまわないのに、つい怒鳴ってしまう。
「もうすぐ反抗期になって「るせえよオヤジ」とか言うようになるんだから、今のうちに言うこと聞いとけ」
「その、反抗期の走り、もう来てるぞ」
 などと、やりあっている。
 思えば私が9歳の夏、何をしていたか。
 基本、昆虫採集に明け暮れていた。
 故郷日田は大分県に属し、大分の特産、椎茸の産地である。
 その椎茸の培地はクヌギである。
 里山に少し入ればクヌギがあちこちにある。
 そのクヌギの樹液は甘く、カブトムシやクワガタが寄ってくる。
 それを獲りに行く。
 ほとんどの甲虫は夜行性だから、本当は夜が良いのだろうが、子供だからそうもいかない。
 だから早朝、出かけていく。
 樹液が出ている木は決まっているので、山の中をパトロールするように、あの木、この木、と渡り歩く。
 他の子は見向きもしないようなカナブンも獲る。
 とにかく虫かごを一杯にしたいのだった。
 かく、虫、虫、虫で明け暮れた夏だった。
 ところが息子は、昆虫は一切嫌い、言葉が出ていなかった4歳のころから、小さな虫を見つけては「プチ、プチ」と指さして、どっかやってくれと言っていた。
 もちろん蜘蛛の巣も大嫌い。
 階段に蜘蛛の巣が張っていると、その下を通るのさえ嫌がる。
 日田の家の蜘蛛の巣の話をすると、絶句して「その話は止めて下さい」などと言う。
 あれは私が、それこそ小学校の3、4年くらいの頃、納屋を探検したときの話である。
 納屋には戦前からの様々な道具が立てかけられ、積まれ、一大奇観を成していた。
 そこにそっと忍び込み、鎌や鍬や、様々な道具を手に取るのが私の密かな楽しみだった。
 ところがある日、何かの拍子に、その道具の山が崩れた。
 微妙なバランスを保っていたガラクタたちが、一斉に崩れた。
 と言っても、それは子供の頃の記憶で、大したことではなかったのだろうが、とにかく、何かが崩れた。
 で、納屋に張られていた蜘蛛の巣が一気に私の顔に吹きつけられた。
 顔中、そして髪の毛まで蜘蛛の巣に覆われた。
 虫は嫌いでなかったが、こんなことまで喜ぶほど変態じゃない。
 そのあとどうしたか憶えてはいないが、とにかく、納屋に入るとろくなことにはならないと学んだ。
「(その納屋)今もあるの?」
「ねえよ。とっくに壊した」
「良かったぁ~」
「それより、公文やれ!」
「るせえよオヤジ!」
「はよ、やれ!」
 ああ、今日も喉が痛い。
 
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プロフィール
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学生の頃から、ホールや福祉施設、商業施設などに呼ばれる形で歌ってきましたが、やはり自分たちの企画で自分たちの音楽をやりたいという思いが強くなり、劇作家・作詞家の伊佐山紫文氏を座付作家として私(浅川)が座長となり、「夙川座」を立ち上げました。

私たちの音楽の特徴は、クラシックの名曲を私たちオリジナルの日本語歌詞で歌うという点にあります。

イタリア語やドイツ語、フランス語などの原語の詩の美しさを楽しみ、原語だからこそ味わえる発声の素晴らしさを聴くことも良いのですが、その一方で、歌で最も大切なのは、歌詞が理解できる、共感できる、心に届くということもあります。

クラシック歌曲の美しい旋律に今のわたしたち、日本人に合った歌詞をつけて歌う、聴くことも素敵ではないかと思います。

オリジナル歌詞の歌は50曲を超え、自主制作のCDも十数枚になりました。

2014年暮れには、梅田グランフロント大阪にある「URGE」さんで、なかまとオリジナル歌詞による夢幻オペラ「幻 二人の光源氏」を公演いたしました。

これらの活動から、冗談のように「夙川座」立ち上げへと向かいました。

夙川は私(浅川)が関西に来て以来、10年住み続けている愛着のある土地だからです。
地元の方々に愛され、また、夙川から日本全国に向けて、オリジナル歌詞によるクラシック歌謡の楽しい世界を広げていきたいという思いを込めています。

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