オリジナル脚本のオペレッタや、朗読とのコラボ、ポピュラーヴォーカルとのコラボなど、様々な場所、お客様に合わせたコンサート、舞台を企画しています!! 夙川、苦楽園がベースです。 どうぞよろしくおねがいいたします。
2017年07月31日

伊佐山紫文7

漬けていた紅ショウガにカビが発生したので急遽サルベージ。
 まさに土用干しとなった。
 日田の家で梅を干していたのを思い出しつつ、赤くなった生姜を洗い、ザルに干す。
 思えば、日田では、こういうことを繰り返していた。
 敗戦後、GHQによる土地改革で自宅以外無一文となった祖母は、庭の梅で梅干しを作り、庭の柿で干し柿を作り、猫の額ほどの田んぼで米を作り、現金に換えて、三人の子供を大学にまで上げた。
 その繰り言は中野重治とともにうちを訪れた武田泰淳のエッセイにまで書かれるほどで、私には耳にタコを通り越してなんともはや、それでも四季の移ろいの中、梅を干し、桜を愛で、出戻って来た娘の琴を聞きながら柿を干す暮らしはそれほど悪いものとは思えなかった。
 梅だの柿だのと言った果物を植えることは、軍人だった祖父は嫌っていたらしく、その理由は、果物、すなわち下り物を植えると家が「成り下がる」というもので、まあ、まさにその通りになった。
 けれども、その下り物が、祖父の死後、家を支えたのだから、これもまた因果というものか。
 ユスラウメ、アンズ、イチジク、ユズ、そしてカボス。
 さまざまな果実が庭を彩り、食卓を支えた。
 極めつけはシホウチク(四方竹で)で、これは秋にタケノコが出る。
 だからこの時期の味噌汁はいつもこのタケノコになる。
 今思えば絶品だったのだろうが、さすがに毎日では飽きる。
 取っても取っても出てくるものだから、あちこちにおすそ分けし、それでも根を伸ばした竹は茶室の床を破り、天井にまで伸びた。
 仕方なく、シホウチクは抜いた。
 また秋になると、庭でいちばん大きな樹木であり、日田市の文化財にも指定されているギンモクセイが花を咲かせる。
 キンモクセイのような、祖母に言わせれば「下品な匂い」ではない、ギンモクセイの香りがふんわりと街を包む。
 今はもう、街は様々な香りに満ちてしまい、その中に埋もれてしまったが、昔は、日田の豆田町に秋を告げる風物詩のひとつだった。

Posted by notebook │Comments(0)
このBlogのトップへ
上の画像に書かれている文字を入力して下さい
 
<ご注意>
書き込まれた内容は公開され、ブログの持ち主だけが削除できます。
プロフィール
notebook
notebook
学生の頃から、ホールや福祉施設、商業施設などに呼ばれる形で歌ってきましたが、やはり自分たちの企画で自分たちの音楽をやりたいという思いが強くなり、劇作家・作詞家の伊佐山紫文氏を座付作家として私(浅川)が座長となり、「夙川座」を立ち上げました。

私たちの音楽の特徴は、クラシックの名曲を私たちオリジナルの日本語歌詞で歌うという点にあります。

イタリア語やドイツ語、フランス語などの原語の詩の美しさを楽しみ、原語だからこそ味わえる発声の素晴らしさを聴くことも良いのですが、その一方で、歌で最も大切なのは、歌詞が理解できる、共感できる、心に届くということもあります。

クラシック歌曲の美しい旋律に今のわたしたち、日本人に合った歌詞をつけて歌う、聴くことも素敵ではないかと思います。

オリジナル歌詞の歌は50曲を超え、自主制作のCDも十数枚になりました。

2014年暮れには、梅田グランフロント大阪にある「URGE」さんで、なかまとオリジナル歌詞による夢幻オペラ「幻 二人の光源氏」を公演いたしました。

これらの活動から、冗談のように「夙川座」立ち上げへと向かいました。

夙川は私(浅川)が関西に来て以来、10年住み続けている愛着のある土地だからです。
地元の方々に愛され、また、夙川から日本全国に向けて、オリジナル歌詞によるクラシック歌謡の楽しい世界を広げていきたいという思いを込めています。

< 2024年04月 >
S M T W T F S
  1 2 3 4 5 6
7 8 9 10 11 12 13
14 15 16 17 18 19 20
21 22 23 24 25 26 27
28 29 30        
カテゴリ
QRコード
QRCODE
アクセスカウンタ
読者登録
メールアドレスを入力して登録する事で、このブログの新着エントリーをメールでお届けいたします。解除は→こちら
現在の読者数 0人