オリジナル脚本のオペレッタや、朗読とのコラボ、ポピュラーヴォーカルとのコラボなど、様々な場所、お客様に合わせたコンサート、舞台を企画しています!! 夙川、苦楽園がベースです。 どうぞよろしくおねがいいたします。
2017年09月14日

伊佐山紫文

『神戸事件始末 瀧善三郎の最期』の本公演が迫ってきた。
 もう明後日である。
 昨日はゲネでなんとかやれるような感触を得た。
 コープこうべさんにお買い上げ頂いてから半年、本当に色々なことがあった。
 本当に長い半年だった。
 生活文化センター35周年の記念企画として、冠に恥じない舞台にしたい。
 と言っても、具体的に出来ることは私にはもうなくて、ただ祈るばかりである。
 実際、肩書きの「演出」とは名ばかり、演技指導の渡部先生が稽古を付けるのを横で見ているだけ。
 もちろん、こんな私でも、若い頃は普通に「演出」もやった。
 けれど老眼が進み、手元の台本と演技とを両方一緒に見ていられなくなって、演出は諦めた。
 もう台本の方に特化する、と。
 その台本もシンプルなもの、背景や衣装の指定もない。
 指定したってそれを現実に用意できるとは限らないし。
 つまり「言葉」に特化します、と。
 そもそも「言葉」と「映像」では使う脳の部位が違う。
 素晴らしい脚本を書くシナリオライターが、必ずしも素晴らしい映画監督になれるわけではないのは、結局、使う脳の部位が違うからで、だからこそ脚本も手がけて名作を作る監督は巨匠と呼ばれ、尊敬を集めることになる。
 いや、両方なんて私には無理ムリ無理。
 そりゃ若い頃は映画も撮りたかったよ。
 早い時期にデジタルカメラも買ったし、有名なプロデューサーから個人的なオファーを受けて舞い上がったこともある。
「一緒にやろうよ、映画なんて簡単なものだから。カメラこっち、目線こっち、でつなげればいいんだから。舞台よりよっぽど簡単だよ。(イサヤマの)原作は物語がしっかりしてるし、これは成功するよ。なあ、やろうよ」
 けれど、けっこう有名なそのプロデューサーと、これまたそれなりに有名な別のプロデューサーと飲む機会があり、そのときの借金自慢の話を聞いて、完全に諦めた。
「で、お前、今、借金いくらくらい?」と、それなりに有名なプロデューサー。
「知らねえよ」と、けっこう有名なプロデューサー。
「知らないってことはねえだろ、自分の借金なんだし」
「自分のじゃねえよ。会社の借金だよ」
「返すのはお前だろ」
「借金も、もう1億を越えてきたら、返す気もなくなってくるんだよな」
「1億!」
「今じゃ、もっと増えてると思うけど」
「いや、たった1億かよ、オレはもっと……」
 ここでたまらず、私が半畳を入れた。
「どこの銀行がそんなに貸してくれるんですか?」
 二人口を揃えて、
「銀行じゃねえよ!」
「じゃあ、どこが?」と私。
「そもそも、銀行がなんで「シャシン(映画)」なんかに金出すんだ。全部、知り合いからの借金だよ。会社員や公務員の友達から、ボーナスのたびに10万とか、毎回百人くらいから借りて、そんなのが何十年も積もり積もって、億って話だよ」
「たまにヒットしたって、借金返すより、次の作品につぎ込んじゃうしな」
「そうそう、友達からの借金は後回しになっちゃうんだよな」
 ここでまた半畳。
「友達、なくしませんか?」
「金のことで友達じゃなくなるやつは、最初から友達じゃねえんだよ」
 見事と言うほかない。
 見事と言うほかないが、私が知っていた角川映画の世界とのギャップに仰天して、ちょっと恐ろしくなって距離を置くようになり、そのうち訃報が届いた。
 葬儀はテレビや映画でよく見る有名人も多数いて、また「友達」だと思われるサラリーマン風の会葬者も百人以上、まさに故人の遺徳を偲ばせるものだった。
 しかも愛人の子供と本妻の子供の談笑風景まで!
 億の借金を作りながら愛人って……
 つくづく「シャシン(映画)」には関われんと思った。
 それでも、このプロデューサーと組んでいたら、と、ふと思うことがある。
 案外、撮った映画が大ヒットして、大金持ちになってたかも。
 芦屋の六麓荘の豪邸に住み、朝からシャトーブリアンを貪り、食後は10頭くらいいる犬と戯れ、昼はシャンパン、軽く昼寝して、夜は新地で豪遊……
 スミマセン、妄想はこのくらいにして、明後日の公演の成功を静かに祈ります。

  

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プロフィール
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学生の頃から、ホールや福祉施設、商業施設などに呼ばれる形で歌ってきましたが、やはり自分たちの企画で自分たちの音楽をやりたいという思いが強くなり、劇作家・作詞家の伊佐山紫文氏を座付作家として私(浅川)が座長となり、「夙川座」を立ち上げました。

私たちの音楽の特徴は、クラシックの名曲を私たちオリジナルの日本語歌詞で歌うという点にあります。

イタリア語やドイツ語、フランス語などの原語の詩の美しさを楽しみ、原語だからこそ味わえる発声の素晴らしさを聴くことも良いのですが、その一方で、歌で最も大切なのは、歌詞が理解できる、共感できる、心に届くということもあります。

クラシック歌曲の美しい旋律に今のわたしたち、日本人に合った歌詞をつけて歌う、聴くことも素敵ではないかと思います。

オリジナル歌詞の歌は50曲を超え、自主制作のCDも十数枚になりました。

2014年暮れには、梅田グランフロント大阪にある「URGE」さんで、なかまとオリジナル歌詞による夢幻オペラ「幻 二人の光源氏」を公演いたしました。

これらの活動から、冗談のように「夙川座」立ち上げへと向かいました。

夙川は私(浅川)が関西に来て以来、10年住み続けている愛着のある土地だからです。
地元の方々に愛され、また、夙川から日本全国に向けて、オリジナル歌詞によるクラシック歌謡の楽しい世界を広げていきたいという思いを込めています。

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