オリジナル脚本のオペレッタや、朗読とのコラボ、ポピュラーヴォーカルとのコラボなど、様々な場所、お客様に合わせたコンサート、舞台を企画しています!! 夙川、苦楽園がベースです。 どうぞよろしくおねがいいたします。
2017年09月20日

伊佐山紫文64

 久しぶりに西宮北口まで出ようかと自転車を走らせていたら携帯が鳴り、浅川社長から、
「シュークリームもらったから取りに来ない?」
 それで、苦楽園口まで10キロの道のりを行くことに。
 まずは171号線をひたすら走り、夙川まで。
 考えてみれば、西宮には20年近く住んだ。
 おそらく、生涯でいちばん長く住んだ土地になると思う。
 西宮と言っても、私が住んでいたのは、夙川のような中心地じゃない。
 田近野という東の外れで、少し歩けば宝塚市、というより、集合住宅の建物の半分ずつが西宮と宝塚に別れていた。
 階段ごとにゴミ出しの日が違う。
 直近の仁川駅前の公衆電話から家に電話するにも市外局番、市議会選挙には「田近野も西宮だ!」とか言う標語が踊るほどの僻地だった。
 冗談でも何でもなく、建物のこっちに住む子は西宮の小学校で、あっちに住む子は宝塚の小学校に通っていた。
 西宮の小学校はすぐそこで問題なかったが、宝塚となると数キロ先で、冬の朝など、集団登校する子供たちを見ながら、大変だなぁ、と思ったものだ。
 それが他人事ではなくなったのが、息子が生まれてから。
 保育園が見つからない。
 見学に行った私立の保育園はどこも素晴らしかった。
 先生たちが熱心で、感動した。
 もう、すぐにもそこに入れたいと思った。
 けれど、もちろん、すべて落ちた。
 理由は分からない。
 書類にはいろいろ数字が並んでいたけれど、とにかく、近くの私立の幼稚園は全て落ちた。
 これは市役所の決めること。
 仕方ない。
 で、数キロ先の、市立の保育園になった。
 これが、遠い。
 仁川沿いの道を自転車で登っていき、一度谷を降りて、もう一度登る。
 毎朝、ギャー泣きする息子を自転車に詰め込み、仁川の左岸を登っていく。
 大雨の朝など、なんでこんなことを、と思いながら、雨具を着せ、自転車に積み込み、雨に打たれながら仁川の岸をひたすら自転車をこぐ。
 その日の夕方、迎えに行くと、先生が、保育園での様子を楽しく話してくれた。
「ブロックを入れる箱のカギを、こうやって、箱の中に入れたんですよ。ニチャ~って笑いながら」
 ああ、雨の中でも、頑張って預けてよかった。
 と、しみじみ思ったものだ。
 結局、この保育園には2年間預けて、伊丹に越してからは私立の幼稚園に入れた。
 と、まあ、浅川社長からシュークリームを受け取り、帰途、西宮の街を通り抜けながら、様々なことを思い出したってわけさ。
 ここは紛れもなく、お前が生まれ、数年間を共に過ごした街なんだって。


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プロフィール
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学生の頃から、ホールや福祉施設、商業施設などに呼ばれる形で歌ってきましたが、やはり自分たちの企画で自分たちの音楽をやりたいという思いが強くなり、劇作家・作詞家の伊佐山紫文氏を座付作家として私(浅川)が座長となり、「夙川座」を立ち上げました。

私たちの音楽の特徴は、クラシックの名曲を私たちオリジナルの日本語歌詞で歌うという点にあります。

イタリア語やドイツ語、フランス語などの原語の詩の美しさを楽しみ、原語だからこそ味わえる発声の素晴らしさを聴くことも良いのですが、その一方で、歌で最も大切なのは、歌詞が理解できる、共感できる、心に届くということもあります。

クラシック歌曲の美しい旋律に今のわたしたち、日本人に合った歌詞をつけて歌う、聴くことも素敵ではないかと思います。

オリジナル歌詞の歌は50曲を超え、自主制作のCDも十数枚になりました。

2014年暮れには、梅田グランフロント大阪にある「URGE」さんで、なかまとオリジナル歌詞による夢幻オペラ「幻 二人の光源氏」を公演いたしました。

これらの活動から、冗談のように「夙川座」立ち上げへと向かいました。

夙川は私(浅川)が関西に来て以来、10年住み続けている愛着のある土地だからです。
地元の方々に愛され、また、夙川から日本全国に向けて、オリジナル歌詞によるクラシック歌謡の楽しい世界を広げていきたいという思いを込めています。

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