オリジナル脚本のオペレッタや、朗読とのコラボ、ポピュラーヴォーカルとのコラボなど、様々な場所、お客様に合わせたコンサート、舞台を企画しています!! 夙川、苦楽園がベースです。 どうぞよろしくおねがいいたします。
2017年10月01日

伊佐山紫文76

 息子が一人前に食べるようになるまで、ずっと魚ばかりだった。
 夕食は刺身やアラの煮物、たまに焼き物。
 なぜ肉を食べなくなったのか、理由は色々あって、どれか一つには確定できないが、まあ、当時の私としては「肉なんか、陸の養殖モノ」という意識があったと思う。
 つまりは「天然」を是とし「養殖」を非としていたわけで、それにも理由があった。
 もう25年以上前、フリーライターとして漁業を取材していた時のことである。
 とある市場での競りの場面。
 養殖ブリが次々と競り落とされていったその最後、奇妙な光景を目にした。
 ほとんどの仲買人が去った後、残ったカゴを競りもなく引き取っていく仲買人がいた。
 何だろうとカゴの中身を見ると、骨が奇妙に歪んだ奇形のブリばかり。
 これか!
 と、その前に取材していた漁業の専門家の話を思い出した。
 養殖の魚の中では、一定数、奇形がでる。
 そして、その奇形のモノばかりを安く買う業者もいる。
 切り身にすればわからないから、奇形魚も市場では同じように流通している。
 と、こんな話で、目の当たりにした奇形魚の姿に震え上がり、二度と養殖物は買わなくなった。
 過剰な反応と言えば、そうなのだが、私の場合、そうなる伏線があった。
 父がまだ酒浸りになる前、趣味は釣りで、よく日田の花月川の光岡橋の下でフナを釣ってきた。
 そのフナに、ある時期から異変が起きた。
 背骨の曲がりくねった奇形魚が釣れだしたのだ。
「これも奇形……これも奇形……」
 と次々と捨てられていく獲物の中に、まともなフナはほとんどいなかった。
 しばらくして、近くのバネ工場の廃液に含まれる重金属が原因だと囁かれるようになり、私は恐ろしくて、しばらくその川の近くにも行けなくなった。
 この時の原体験が私を環境問題に走らせたと言ってもいい。
 で、その原体験が、養殖ブリの奇形魚を見たときに甦ったのである。
 今では、この奇形の原因物質である有機スズの使用は禁止されており、その他の薬物も昔に比べればかなり抑えられているという。
 そういうことを売りにした養殖モノも出始めている。
 けれど、私が取材した80年代後半では、奇形ブリの話など都市伝説のようなもので、一般の人は全く知らなかった。
 ジャーナリストたちも、そういう事実があることを知りながら、諸般の事情を推し量った上で報道しなかった。
 かく言う私もその一人で、何せ媒体がコープさんの雑誌とあっちゃ、自主規制せざるを得ない。
 そのかわりこれからは天然物だけを食わせて貰います、みたいな。
「陸の養殖モノ」たる肉も出来る限り遠慮させて貰います、みたいな。
 こうして肉を遠ざけてきたのだが、子供の食欲の前ではそんなことも言ってられない。
 ちゃんと飼料を公開しているような肉を、それも出来るだけ安い肉を買い、かさ増し調理して食べさすし、自分でも食べる。
 それでも健康に過ごしているから、魚ばっかり食ってりゃいいってものでもないらしい。   

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プロフィール
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学生の頃から、ホールや福祉施設、商業施設などに呼ばれる形で歌ってきましたが、やはり自分たちの企画で自分たちの音楽をやりたいという思いが強くなり、劇作家・作詞家の伊佐山紫文氏を座付作家として私(浅川)が座長となり、「夙川座」を立ち上げました。

私たちの音楽の特徴は、クラシックの名曲を私たちオリジナルの日本語歌詞で歌うという点にあります。

イタリア語やドイツ語、フランス語などの原語の詩の美しさを楽しみ、原語だからこそ味わえる発声の素晴らしさを聴くことも良いのですが、その一方で、歌で最も大切なのは、歌詞が理解できる、共感できる、心に届くということもあります。

クラシック歌曲の美しい旋律に今のわたしたち、日本人に合った歌詞をつけて歌う、聴くことも素敵ではないかと思います。

オリジナル歌詞の歌は50曲を超え、自主制作のCDも十数枚になりました。

2014年暮れには、梅田グランフロント大阪にある「URGE」さんで、なかまとオリジナル歌詞による夢幻オペラ「幻 二人の光源氏」を公演いたしました。

これらの活動から、冗談のように「夙川座」立ち上げへと向かいました。

夙川は私(浅川)が関西に来て以来、10年住み続けている愛着のある土地だからです。
地元の方々に愛され、また、夙川から日本全国に向けて、オリジナル歌詞によるクラシック歌謡の楽しい世界を広げていきたいという思いを込めています。

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