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2017年10月11日

伊佐山紫文87

 妻がカズオ・イシグロの『わたしを離さないで』を読み終え、
「こんなものなん?」
 まあ、順当な感想だと思う。
 とにかく、文学文学してないんだよな、カズオ・イシグロの作品は。
 それがこの人の魅力なんだし。
 そもそもこの人の文学の魅力の9割は繊細な英文にあるから、それは翻訳では伝わらない。
 翻訳を一読しても、なんとなく、スラスラ読める、軽い感じの物語にしか感じられない。
 物語だけを取り出して比較すれば、日本の少女漫画にはもっと深く深刻なものがゴロゴロある。
 萩尾望都とか、竹宮恵子とか。
 そういうのと比べると、カズオ・イシグロの文学は、物語として、どうしようもなく軽い。
 ナレーションで読者を騙すテクニックも、分かってしまえばそれまでだし。
 なのに、なんでノーベル賞かと言えば、これは私の個人的な妄想でしかないが、村上春樹受賞の芽を完全に潰したのだと思う。
 ノーベル賞の選考委員にとって、村上春樹はやっかいな存在だった、と思う。
 政治的な発言を滅多にしないし、これだけでも左派的な色彩の強い文学賞選考基準からは大きく離れる。
 しかも、それじゃあ、と政治的発言をしてみれば、反イスラエル。
 講談社が甘かったのだと思うが、これで絶対に受賞はなくなった。
 それでも無知なブックメーカーは受賞を予想してくる。
 仕方ない、と似たような作風のカズオ・イシグロを受賞させる。
 日系だし、これでしばらくは日本人作家の受賞はなくなる。
 当然、村上春樹の受賞の芽は完全に消える。
 最近のは読んでいないが、村上春樹の初期の短編には佳作が多かった。
 日本文学にはない、むしろアメリカ文学の、レイモンド・チャンドラーにつながるような、狭い生活世界のリアリズムと、精神分析をベースにした乾いたペーソス。
 かと思えば『世界の終りとハードボイルド・ワンダーランド』のような重厚なものも書く。
 ノーベル賞がなんぼのモノかは知らないが、まあ、取ってもいいんじゃないか。
 なにしろ過去にはイギリスのチャーチルなんかも受賞しているんだし。
 去年はボブ・ディランだし。
 選考基準なんかワケがわからんとしか言いようがない。
 もちろん、それは芸術に対して賞を与えて評価しようという、その姿勢そのものの傲慢さから来るものだろうから、仕方ないと言えば仕方ない。
 私としては、今回のカズオ・イシグロ受賞が、この人や村上春樹の文学に通底すると思われるヨーゼフ・ロートの再評価につながれば良いなとは思う。
『聖なる酔っ払いの伝説』のような、軽妙な驚きに満ちた、そして暖かい世界。
 重くて暗いのだけが文学じゃないし。
  

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プロフィール
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学生の頃から、ホールや福祉施設、商業施設などに呼ばれる形で歌ってきましたが、やはり自分たちの企画で自分たちの音楽をやりたいという思いが強くなり、劇作家・作詞家の伊佐山紫文氏を座付作家として私(浅川)が座長となり、「夙川座」を立ち上げました。

私たちの音楽の特徴は、クラシックの名曲を私たちオリジナルの日本語歌詞で歌うという点にあります。

イタリア語やドイツ語、フランス語などの原語の詩の美しさを楽しみ、原語だからこそ味わえる発声の素晴らしさを聴くことも良いのですが、その一方で、歌で最も大切なのは、歌詞が理解できる、共感できる、心に届くということもあります。

クラシック歌曲の美しい旋律に今のわたしたち、日本人に合った歌詞をつけて歌う、聴くことも素敵ではないかと思います。

オリジナル歌詞の歌は50曲を超え、自主制作のCDも十数枚になりました。

2014年暮れには、梅田グランフロント大阪にある「URGE」さんで、なかまとオリジナル歌詞による夢幻オペラ「幻 二人の光源氏」を公演いたしました。

これらの活動から、冗談のように「夙川座」立ち上げへと向かいました。

夙川は私(浅川)が関西に来て以来、10年住み続けている愛着のある土地だからです。
地元の方々に愛され、また、夙川から日本全国に向けて、オリジナル歌詞によるクラシック歌謡の楽しい世界を広げていきたいという思いを込めています。

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