オリジナル脚本のオペレッタや、朗読とのコラボ、ポピュラーヴォーカルとのコラボなど、様々な場所、お客様に合わせたコンサート、舞台を企画しています!! 夙川、苦楽園がベースです。 どうぞよろしくおねがいいたします。
2017年12月28日

伊佐山紫文107

 吉四六さんをごぞんじだろうか?
 このワープロ、一太郎で「きっちょむ」と打ち込めば吉四六と出る。
 大分の民話の主人公である。
 この吉四六話の本を息子が学校図書館から借りてきた。
 ところが、その中に、無い。
 あの有名な話が載ってない。
 今でも皆簡単に「味噌糞」というが、その語源となった(のかどうかは不明だが)有名な吉四六の「ミソクソ」話である。
 これを息子にしたところ、笑い転げ回って「またその話して」の繰り返し。
 確かに、吉四六話の中では最もインパクトのあるエピソードだから私も憶えていたわけで。
 オペラの「吉四六昇天」とはまた違う趣の話である。
 少々下品だが、伊佐山版として再録しておく。

 臼杵の吉四六さんが、大分の有名な味噌の評判を聞いたんだと。
 その店の味噌はたいそう香りが良くて、それで鍋でもしようもんなら、家中が良い香りに満ちて、みんなが幸せになるんだと。
 よし、買いに行こう、と吉四六さんは一念発起。
 女房も期待して待ってるという。
 大丈夫。
 味噌を包む竹の皮も二枚用意して、意気揚々と大分へと向かった。
 店の味噌は確かに香りも良く、家のものとは段違いのものだった。
 これを竹の皮に包み、大事に懐に入れ、臼杵へと向かった。
 ところが山を越えるところで腹具合が悪くなった。
 当時の大便は大切な肥料。
 そこらに野グソして捨てて良いようなものじゃない。
 大切に、もう一枚の竹の皮に包んで持ち帰る。
 そこらに生えた竹を折り、前には味噌を、後ろにはクソを吊し、
「前は味噌、後ろはクソ。前は味噌、後ろはクソ」
 唱えながら山を越える。
 と、峠を越えるところで、はぐれた馬がものすごい勢いで走ってくる。
 吉四六さん、慌てて身をかわす。
「ああ、危ない。なんだよあれ。さて……」
 あまりのことに、
「前はクソ、後ろは味噌。前はクソ、後ろは味噌」
 入れ替わっていることに気づかない。
 で、家に帰ると、
「さ、こんなものは早く肥だめへ」
 と買ってきた味噌を肥だめへ捨ててしまう。
 女房には自分の大便を、
「これが大分の味噌じゃ」
 あまりの異臭に、
「こんな臭い味噌があるんかい」
「だから、これが上等なお店の味噌じゃ」
 竹の皮を開けると、まさにクソそのもの。
 鍋に入れれば家中にクソの臭いが満ちる。
 二人して咳き込みながら、
「これが大分の味噌か」
「そうじゃ、これが大分の味噌じゃ」
「全然旨くないぞ」
「これが上品な味ちゅうもんじゃ」
 こうしてしばらくは吉四六さんの家は吉四六さんのクソの臭いに満ちていた、とさ。
 めでたし、めでたし(どこがっ!) 

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プロフィール
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学生の頃から、ホールや福祉施設、商業施設などに呼ばれる形で歌ってきましたが、やはり自分たちの企画で自分たちの音楽をやりたいという思いが強くなり、劇作家・作詞家の伊佐山紫文氏を座付作家として私(浅川)が座長となり、「夙川座」を立ち上げました。

私たちの音楽の特徴は、クラシックの名曲を私たちオリジナルの日本語歌詞で歌うという点にあります。

イタリア語やドイツ語、フランス語などの原語の詩の美しさを楽しみ、原語だからこそ味わえる発声の素晴らしさを聴くことも良いのですが、その一方で、歌で最も大切なのは、歌詞が理解できる、共感できる、心に届くということもあります。

クラシック歌曲の美しい旋律に今のわたしたち、日本人に合った歌詞をつけて歌う、聴くことも素敵ではないかと思います。

オリジナル歌詞の歌は50曲を超え、自主制作のCDも十数枚になりました。

2014年暮れには、梅田グランフロント大阪にある「URGE」さんで、なかまとオリジナル歌詞による夢幻オペラ「幻 二人の光源氏」を公演いたしました。

これらの活動から、冗談のように「夙川座」立ち上げへと向かいました。

夙川は私(浅川)が関西に来て以来、10年住み続けている愛着のある土地だからです。
地元の方々に愛され、また、夙川から日本全国に向けて、オリジナル歌詞によるクラシック歌謡の楽しい世界を広げていきたいという思いを込めています。

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