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2017年08月29日

伊佐山紫文42

『美味しんぼ ア・ラ・カルト 元気の出る料理』(作:雁屋哲 画:花咲アキラ)を駅の売店で買い、新幹線の車中で読んだ。
 広島から帰ってきて、妻が「なんでそんなもの買ったのよ」と言うから、
「懐かしいからだろ」
「懐かしい? 懐かしいからって買うの?」
「懐かしい以上の買う理由ってあるか?」
 とにかく懐かしい。
 この『美味しんぼ』の『ビッグコミックスピリッツ』での連載が始まったのが私の学生時代で、当時、友人の間では山岡士郎のモデルは私だと言われたものだった。
 食品添加物だの化学調味料だのにウルサく、有機農産物だの無農薬だの、得体の知れないことにこだわる不気味な学生、それが私だった。
『美味しんぼ』の連載が始まったとき、私は周囲に絶賛し、単行本が出るとすぐに買い、日田の家族に薦めた。
 山岡の父親である海原雄山が生涯をかけて乗り越えようとしているとの設定の、北大路魯山人の著作にもこの頃出会い、生活を芸術化するという理想に憧れた。
 とにかく料理は手作りする。
 化学調味料や市販の出汁やコンソメなどは一切使わない。
 魚は一匹買ってきて自分でさばく。
 素性の知れない肉は食べない。
 インスタントラーメンやレトルトカレーなどとんでもない。
 添加物のカタマリ、毒です。
 まあ、ヘルシーっちゃヘルシーだし、勝手にやってるぶんには誰にも迷惑をかけないから良いようなものの、これを政治化してたからね、左翼学生だった私は。
 大学生協の食堂に色々イチャモンをつけたりなんだり、思い返すも恥ずかしい所行に及んでいた。
『美味しんぼ』も今読めばムチャクチャ政治的で、さすが原作が『男組』『男大空』の雁屋哲だと感心するし、だからこそ学生時代の私に響いたのだと思う。
 いや~もう、恥ずかしい。
 懐かしいなんてもんじゃない、恥ずかしすぎてページをめくっていられない。
 一言で言えば幼稚。
『美味しんぼ』も、これに感銘を受けた当時の私も。
 たとえば沖縄が長寿なのは男性の自殺率が極端に低いからであり、食生活とは無関係であることは統計的に明らかとなっている。
 であれば長寿食として沖縄の料理を紹介する意味はない。
 そんな、こんな。
 ビタミンだのミネラルだのの議論も常識の範囲で、浅い。
 浅いけれど、思い返せば、こんな常識もかつては常識ではなかったということか。
 その意味では確かに日本の食生活を変えたマンガだとは思う。
 あの時代には、このマンガが必要だったのかも知れない。
 で、いつしか私も歳を取り『スピリッツ』も読まなくなって、『美味しんぼ』からも卒業した。
 今ではインスタントラーメンもレトルトカレーも普通に食べるし、生活の芸術化などとはほど遠い生活をおくっている。
『美味しんぼ』とは、私にとって懐かしく恥ずかしい、青春の書であることを確認した。
「ハァ! そんなことのために450円も使ったの!」
 すみませんね。
 以後気をつけます。

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プロフィール
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学生の頃から、ホールや福祉施設、商業施設などに呼ばれる形で歌ってきましたが、やはり自分たちの企画で自分たちの音楽をやりたいという思いが強くなり、劇作家・作詞家の伊佐山紫文氏を座付作家として私(浅川)が座長となり、「夙川座」を立ち上げました。

私たちの音楽の特徴は、クラシックの名曲を私たちオリジナルの日本語歌詞で歌うという点にあります。

イタリア語やドイツ語、フランス語などの原語の詩の美しさを楽しみ、原語だからこそ味わえる発声の素晴らしさを聴くことも良いのですが、その一方で、歌で最も大切なのは、歌詞が理解できる、共感できる、心に届くということもあります。

クラシック歌曲の美しい旋律に今のわたしたち、日本人に合った歌詞をつけて歌う、聴くことも素敵ではないかと思います。

オリジナル歌詞の歌は50曲を超え、自主制作のCDも十数枚になりました。

2014年暮れには、梅田グランフロント大阪にある「URGE」さんで、なかまとオリジナル歌詞による夢幻オペラ「幻 二人の光源氏」を公演いたしました。

これらの活動から、冗談のように「夙川座」立ち上げへと向かいました。

夙川は私(浅川)が関西に来て以来、10年住み続けている愛着のある土地だからです。
地元の方々に愛され、また、夙川から日本全国に向けて、オリジナル歌詞によるクラシック歌謡の楽しい世界を広げていきたいという思いを込めています。

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