2017年07月28日
伊佐山紫文5
高二の夏休み、水生昆虫の同定にいそしむ理科室では、友人の録音したNHKFMの何かの曲が流れていた。そのテープを巻き戻すたび「オトマール・スウィトナー指揮、NHK交響楽団……」の文句が流れ、曲そのものは忘れたが、指揮者の名前はいやが上にも記憶に残ってしまった。
当時、私は世界最高の指揮者はカラヤンだと思っていたし、それに次ぐのはベーム、バーンスタインを挙げる程度の子供だったから、スウィートナーの演奏が理解できるはずもない。
だからなんの曲だったか忘れたし、後年、友人になぜスウィトナーをかけていたのかを聞いても、友人はそのこと自体を忘れている始末で、藪の中とはこのことだ。
で、今、十数年ぶりにスウィートナーのCDボックスを出して聞いている。
これが、良い。
モーツァルトの交響曲はやたら数が多くて、どれがどれやらという感じになるが、私が好きなのは、39、40、41を別格としたら、何と言っても36番の「リンツ」である。
「ウルトラセブン」を思わせる出だしで、その後、一気に引き込まれ、怒濤の第四楽章まで休むことなく突き進む。
第四楽章での、木管から弦、弦から木管へのメロディの引き渡しに続くフルオーケストラの爆発は圧巻で、天才の仕事とはかくやと思わせる。
残念なことに、この「リンツ」は、私が最高のモーツァルト指揮者だと信じているジョージ・セルのステレオ録音がない。
だから、誰の録音を聞いても、セルだったらこうするだろうな、という思いが残ってしまうのだけれど、スウィートナーは違う。
モーツァルトがそれ自体、それ自身の音楽として流れていく。
これはスウィトナーの全ての録音について言えることで、良く言えば原典に忠実、悪く言えば無個性ということだろう。
それでも私はスウィートナーの演奏に親しみを感じる。
モーツァルト指揮者として評価の高いベームは、オペラはともかく、交響曲は、あのザラッとした無骨さがなじめない。
それに個人的な恨みもある。
15年くらい前だったか、日田に帰省したとき、まだ5時前なのに居間でゴソゴソと音がする。
アル中だった両親がまた変なことを始めたかと起きていくと、二人して神妙にテレビに見入っている。
そこではカール・ベームがモーツァルトの39番を振っているのだった。
「衛星放送をつけたら、これが映っちょるつぞ、これはワインを飲まんわけにはいかん」
そう言って、母親を起こして、二人で飲んでいたのだという。
すでにベロベロだ。
ベーム、手前、余計なことを!
と思ったものだ。
その後、両親は相次いでアルコールに倒れ、亡くなった。
別にベームのせいではあるまいが、二度と聞く気にはならん。
当時、私は世界最高の指揮者はカラヤンだと思っていたし、それに次ぐのはベーム、バーンスタインを挙げる程度の子供だったから、スウィートナーの演奏が理解できるはずもない。
だからなんの曲だったか忘れたし、後年、友人になぜスウィトナーをかけていたのかを聞いても、友人はそのこと自体を忘れている始末で、藪の中とはこのことだ。
で、今、十数年ぶりにスウィートナーのCDボックスを出して聞いている。
これが、良い。
モーツァルトの交響曲はやたら数が多くて、どれがどれやらという感じになるが、私が好きなのは、39、40、41を別格としたら、何と言っても36番の「リンツ」である。
「ウルトラセブン」を思わせる出だしで、その後、一気に引き込まれ、怒濤の第四楽章まで休むことなく突き進む。
第四楽章での、木管から弦、弦から木管へのメロディの引き渡しに続くフルオーケストラの爆発は圧巻で、天才の仕事とはかくやと思わせる。
残念なことに、この「リンツ」は、私が最高のモーツァルト指揮者だと信じているジョージ・セルのステレオ録音がない。
だから、誰の録音を聞いても、セルだったらこうするだろうな、という思いが残ってしまうのだけれど、スウィートナーは違う。
モーツァルトがそれ自体、それ自身の音楽として流れていく。
これはスウィトナーの全ての録音について言えることで、良く言えば原典に忠実、悪く言えば無個性ということだろう。
それでも私はスウィートナーの演奏に親しみを感じる。
モーツァルト指揮者として評価の高いベームは、オペラはともかく、交響曲は、あのザラッとした無骨さがなじめない。
それに個人的な恨みもある。
15年くらい前だったか、日田に帰省したとき、まだ5時前なのに居間でゴソゴソと音がする。
アル中だった両親がまた変なことを始めたかと起きていくと、二人して神妙にテレビに見入っている。
そこではカール・ベームがモーツァルトの39番を振っているのだった。
「衛星放送をつけたら、これが映っちょるつぞ、これはワインを飲まんわけにはいかん」
そう言って、母親を起こして、二人で飲んでいたのだという。
すでにベロベロだ。
ベーム、手前、余計なことを!
と思ったものだ。
その後、両親は相次いでアルコールに倒れ、亡くなった。
別にベームのせいではあるまいが、二度と聞く気にはならん。
S | M | T | W | T | F | S |
---|---|---|---|---|---|---|
1 | 2 | 3 | 4 | 5 | ||
6 | 7 | 8 | 9 | 10 | 11 | 12 |
13 | 14 | 15 | 16 | 17 | 18 | 19 |
20 | 21 | 22 | 23 | 24 | 25 | 26 |
27 | 28 | 29 | 30 |
最近の記事
11月21日日曜日大阪で上方ミュージカル! (7/24)
リモート稽古 (7/22)
11月21日(日)大阪にて、舞台「火の鳥 晶子と鉄幹」 (7/22)
茂木山スワン×伊佐山紫文 写真展 (5/5)
ヘアサロン「ボザール」の奇跡 (2/28)
ヘアサロン「ボザール」の奇跡 (2/26)
ヘアサロン「ボザール」の奇跡 (2/25)
yutube配信前、数日の会話です。 (2/25)
初の、zoom芝居配信しました! (2/24)
過去記事
最近のコメント
notebook / 9月16土曜日 コープ神戸公演
岡山新選組の新八参上 / 9月16土曜日 コープ神戸公演
notebook / ムラマツリサイタルホール新・・・
山岸 / 九州水害について
岡山新選組の新八参上 / 港都KOBE芸術祭プレイベント
お気に入り
ブログ内検索
QRコード

アクセスカウンタ
読者登録