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2017年08月15日

伊佐山紫文25

『世界はなぜ「ある」のか? 「究極のなぜ?」を追う哲学の旅』
ジム・ホルト著 寺町朋子訳 ハヤカワ文庫
 ハイデッガーの『形而上学入門』は「入門」でも何でもなく、真正面から存在の問い「なぜ何も無いのではなく、何かがあるのか?」を問うた、超難解な哲学書である。
 同じ問いを、本書では、まず「宇宙の存在」について、宇宙の始原とは何か、本当に無から有が生じたのかについて、物理学者や天文学者にインタビューして回る。
 難解な部分もあるが、数式も出てこず、また、インタビュー前後の食事の様子なども描かれていて、楽しく読める。
 後半、「私の存在」へと問いが移ると、こんどは哲学者や作家へのインタビュー。
 著者の母親が死に、思い出の場所をあてどなく彷徨うラストには、九年前の母の死を思い出して不覚にも落涙。
 哲学書としては荒い。
 けれどもきちんとした読後感の残る、人生を少しだけ豊かにしてくれる好著である。
 実は30年前、こういう本が書きたくてたまらなかった。
 ちょうど浅田彰の『構造と力』が売れてる時期で、こんなのが10万部も売れるのなら、オレ様の書く本は1億部以上売れて当然だと思っていた。
 その後、雑誌の仕事に疲れ果て、本が出れば売れるはずだからと執筆に専念した。
 で、出した本は売れなかったが、講演の仕事は入って来て、サインを求められることも再々だった。
『ライフステーション』のライバル誌『レタスクラブ』からもインタビューを受け、カラー見開きで写真が載ったこともある。
 あの頃はまだ、フォトジェニックだった。
 なんてったって、28歳だもの。
 そんなこんなで、小金が少し溜まったから、覚悟を決めて長編評論を書こうと思った。
 2年かけて書き上げ、『構造と力』と同じ勁草書房に持ち込んだ。
 すぐに出版され、専門家からの評価も高く、海外の日本文化研究者の必読書として文化庁が推薦する図書にも選定された。
 ただし、売れなかった。
 本当に、恥ずかしいくらい。
『ライフステーション』の読者プレゼントに5冊出したが、応募は2通だけ。
 編集部でもいらんと言われ、3冊戻って来た。
 客観的に見れば、このあたりから時代とズレ始めたのだと思う。
 足掻けば足掻くほど泥沼で、そのうち両親は倒れるし、本を出しても売れる当てはないし、日田に帰って法律家にでもなるか、などと司法試験の勉強を始める始末。
 こんな私には、ちゃんと一般読者に売れる哲学書を書ける著者が羨ましくてたまらない。

 
 

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プロフィール
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学生の頃から、ホールや福祉施設、商業施設などに呼ばれる形で歌ってきましたが、やはり自分たちの企画で自分たちの音楽をやりたいという思いが強くなり、劇作家・作詞家の伊佐山紫文氏を座付作家として私(浅川)が座長となり、「夙川座」を立ち上げました。

私たちの音楽の特徴は、クラシックの名曲を私たちオリジナルの日本語歌詞で歌うという点にあります。

イタリア語やドイツ語、フランス語などの原語の詩の美しさを楽しみ、原語だからこそ味わえる発声の素晴らしさを聴くことも良いのですが、その一方で、歌で最も大切なのは、歌詞が理解できる、共感できる、心に届くということもあります。

クラシック歌曲の美しい旋律に今のわたしたち、日本人に合った歌詞をつけて歌う、聴くことも素敵ではないかと思います。

オリジナル歌詞の歌は50曲を超え、自主制作のCDも十数枚になりました。

2014年暮れには、梅田グランフロント大阪にある「URGE」さんで、なかまとオリジナル歌詞による夢幻オペラ「幻 二人の光源氏」を公演いたしました。

これらの活動から、冗談のように「夙川座」立ち上げへと向かいました。

夙川は私(浅川)が関西に来て以来、10年住み続けている愛着のある土地だからです。
地元の方々に愛され、また、夙川から日本全国に向けて、オリジナル歌詞によるクラシック歌謡の楽しい世界を広げていきたいという思いを込めています。

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