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2017年08月22日

伊佐山紫文34

『三文オペラ』ブレヒト作 谷川道子訳 光文社古典新訳文庫
 先日亡くなった作詞家の山川啓介先生は、実はご自身でも脚本を書き、ミュージカルを作っておられた。
 それで、とあるシンポジウムで音楽劇の名作の条件を挙げられた。
「一つの作品の中に一曲でも良い、名曲が生まれれば、それは名作です」
 私はその時、まだ作詞を始めてはおらず、脚本を作る劇作家という立場でパネリストになっていたので、ちょっとカチンと来、それでもその場は憚れ、打ち上げの席で反論した。
 やはり、芝居はストーリーだと思います、と。
 すると先生は「『キャッツ』ってどんな話だった?」と聞いてこられた。
 参った、と思った。
 あんなよく分からん話でも「メモリー」一曲で名作になるのがこの世界なのだ。
 まさに舞台には魔物が潜んでいる。
 で『三文オペラ』である。
 一時の日本の左翼演劇界はブレヒトで回っていた時期があって、猫も杓子もブレヒトで、そうでなければ反ブレヒト、異化だかタコだか、教育劇か今日行く劇か、それはそれはウザイものだった(らしい)。
 ブレヒトのそもそもの経歴が極めてうさんくさい。
 ナチスを逃れてアメリカ亡命まではまあ分かるとして、落ち着く先が東ドイツで、これから年譜で辿るだけでも東ドイツの「芸術アカデミー会員」になり「東西ベルリンのペンクラブの会長」に選ばれ、あげくは「スターリン国際平和賞」まで「受賞」するなんて、どれほどうさんくさい存在なんだよ。
 でもこれが日本の左翼にはたまらない輝かしさで、うちの父親は我が神、吾が仏とばかりにあがめ奉っていた。
 で、今、新訳で読み返してみると、ハッキリ言ってつまらない。
 それでも名作なのは、本書でのタイトル「ドスのメッキーズ殺しのバラード(モリタート)」一曲があるからだろう。
 英名は「マック・ザ・ナイフ」、ジャズのスタンダードナンバーにもなった、クルト・ヴァイルの傑作である。
 実家にも若いクレンペラー指揮の組曲盤『三文オペラ』があったような気がする。
 往年の大指揮者の悠揚たる響きとは違う、もっとセカセカした、退廃音楽を地でいくような演奏だったような。
 なんでこれを今読み返したのかと言えば、先日、若い人たちと演出上のことでナイフ使いのことが話題になり「メッキー・メッサーのモリタート」の話をすると、全く知らない、聴いたこともない、と。
 私も『三文オペラ』の内容は忘れていたので、どういう話だったのか、読み返したってこと。
 まあ、時間の無駄とまでは言わないけれど……
 こんなやっつけ仕事が世界的大ヒットになってしまうんだから、まさに舞台には魔物が潜んでいます。
 どんな魔物か知らないが、あやかりたいものです。

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プロフィール
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学生の頃から、ホールや福祉施設、商業施設などに呼ばれる形で歌ってきましたが、やはり自分たちの企画で自分たちの音楽をやりたいという思いが強くなり、劇作家・作詞家の伊佐山紫文氏を座付作家として私(浅川)が座長となり、「夙川座」を立ち上げました。

私たちの音楽の特徴は、クラシックの名曲を私たちオリジナルの日本語歌詞で歌うという点にあります。

イタリア語やドイツ語、フランス語などの原語の詩の美しさを楽しみ、原語だからこそ味わえる発声の素晴らしさを聴くことも良いのですが、その一方で、歌で最も大切なのは、歌詞が理解できる、共感できる、心に届くということもあります。

クラシック歌曲の美しい旋律に今のわたしたち、日本人に合った歌詞をつけて歌う、聴くことも素敵ではないかと思います。

オリジナル歌詞の歌は50曲を超え、自主制作のCDも十数枚になりました。

2014年暮れには、梅田グランフロント大阪にある「URGE」さんで、なかまとオリジナル歌詞による夢幻オペラ「幻 二人の光源氏」を公演いたしました。

これらの活動から、冗談のように「夙川座」立ち上げへと向かいました。

夙川は私(浅川)が関西に来て以来、10年住み続けている愛着のある土地だからです。
地元の方々に愛され、また、夙川から日本全国に向けて、オリジナル歌詞によるクラシック歌謡の楽しい世界を広げていきたいという思いを込めています。

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