2017年09月29日
伊佐山紫文74
学生の頃に寝酒を覚え、以来ずっと、毎日欠かすことなく飲んでいる。
基本はワイン。
それから失敗した甘酒。
歯を磨いてからは焼酎。
ちゃんぽんもいいところで、これで量が増せばアル中一直線である。
私の両親は二人ともアル中だったので、その因子を持っていることは確実、そう思うと不安で不安で……酒の量がますます増える。
とにかく、酒が飲める人は、常にアル中リスクに晒されていると思った方が良い。
アル中という終着駅に向かって、各駅で行くか、特急で行くか。
節制していてもアル中行きの電車に乗っているという事実に違いはない。
各駅で行くうちに寿命が来て死ぬか、寿命より遙か手前で終着駅についてしまうか。
それだけの差である。
とはいえ、この差はとてつもなく大きい。
私と同じ55歳くらいの時、父はすでに夕食は食べていなかったような気がする。
食べ物は酒の味を濁すとか、もっともらしいことを言って、ひたすら酒を、酒だけを飲んでいた。
バブルの最後の最後に喫茶店の土地を売り逃げてお金に余裕が出来てからは、朝から夜まで連続飲酒状態になり、チビリチビリと何かを口に入れながら日本酒を浴びるように飲んだ。
母と二人で、基本、一日二升の日本酒を飲んでいた。
人が来たりすると酒量は増え、これに一升、または洋酒がボトル単位で消えた。
で、そのまま70歳になり、酒を抜くと手が震え始めた。
コップを持っていられない。
酒の入ったコップをテーブルに置いたまま口を近づけて飲み、震えが治まってから、やっと手に取る。
絵に描いたようなアル中である。
記憶障害も出始めて、認知症と区別がつかない状態になった。
後の診断では「ウェルニッケ=コルサコフ症候群」という、アル中に付随する脳萎縮が原因とされたが、私たちは、勝手に「アル中(アルチュ)ハイマー」と名付けていた。
数年後、そのアル中ハイマーが極まり、暴発した。
自宅と同じ敷地の伯母たちの家に上がり込み、うずくまり、丸くなって、カウントダウンならぬ、カウントアップを始めた。
おそらく、前日の人工衛星打ち上げのロケット発射のつもりである。
それでも、
「いーち、にーい、さーん……」
から始めるものだから、いつまで経っても発射できない。
「じゅうは~ち、じゅうは~ち、じゅうは~ち……」
延々と続く「じゅうは~ち」に伯母は業を煮やし、
「次は19じゃろが!」
いやいや、それ、19でも、何の問題の解決にもなってないし。
これでもう、家では解決不能だと判断して、アル中病院に入院させた。
かつてタモリが働いていたホテル「雅叙園」を改装した病院である。
遙かに戸山を望み、真下には三隈川が流れ、日田市街を見下ろして聳える。
晴れた日の、窓からの眺めが最高に美しい病院である。
父はこの病院で転んで骨折し、転院した整形外科で肺炎になり、あっけなく逝った。
やっと76になったばかりだった。
基本はワイン。
それから失敗した甘酒。
歯を磨いてからは焼酎。
ちゃんぽんもいいところで、これで量が増せばアル中一直線である。
私の両親は二人ともアル中だったので、その因子を持っていることは確実、そう思うと不安で不安で……酒の量がますます増える。
とにかく、酒が飲める人は、常にアル中リスクに晒されていると思った方が良い。
アル中という終着駅に向かって、各駅で行くか、特急で行くか。
節制していてもアル中行きの電車に乗っているという事実に違いはない。
各駅で行くうちに寿命が来て死ぬか、寿命より遙か手前で終着駅についてしまうか。
それだけの差である。
とはいえ、この差はとてつもなく大きい。
私と同じ55歳くらいの時、父はすでに夕食は食べていなかったような気がする。
食べ物は酒の味を濁すとか、もっともらしいことを言って、ひたすら酒を、酒だけを飲んでいた。
バブルの最後の最後に喫茶店の土地を売り逃げてお金に余裕が出来てからは、朝から夜まで連続飲酒状態になり、チビリチビリと何かを口に入れながら日本酒を浴びるように飲んだ。
母と二人で、基本、一日二升の日本酒を飲んでいた。
人が来たりすると酒量は増え、これに一升、または洋酒がボトル単位で消えた。
で、そのまま70歳になり、酒を抜くと手が震え始めた。
コップを持っていられない。
酒の入ったコップをテーブルに置いたまま口を近づけて飲み、震えが治まってから、やっと手に取る。
絵に描いたようなアル中である。
記憶障害も出始めて、認知症と区別がつかない状態になった。
後の診断では「ウェルニッケ=コルサコフ症候群」という、アル中に付随する脳萎縮が原因とされたが、私たちは、勝手に「アル中(アルチュ)ハイマー」と名付けていた。
数年後、そのアル中ハイマーが極まり、暴発した。
自宅と同じ敷地の伯母たちの家に上がり込み、うずくまり、丸くなって、カウントダウンならぬ、カウントアップを始めた。
おそらく、前日の人工衛星打ち上げのロケット発射のつもりである。
それでも、
「いーち、にーい、さーん……」
から始めるものだから、いつまで経っても発射できない。
「じゅうは~ち、じゅうは~ち、じゅうは~ち……」
延々と続く「じゅうは~ち」に伯母は業を煮やし、
「次は19じゃろが!」
いやいや、それ、19でも、何の問題の解決にもなってないし。
これでもう、家では解決不能だと判断して、アル中病院に入院させた。
かつてタモリが働いていたホテル「雅叙園」を改装した病院である。
遙かに戸山を望み、真下には三隈川が流れ、日田市街を見下ろして聳える。
晴れた日の、窓からの眺めが最高に美しい病院である。
父はこの病院で転んで骨折し、転院した整形外科で肺炎になり、あっけなく逝った。
やっと76になったばかりだった。
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