オリジナル脚本のオペレッタや、朗読とのコラボ、ポピュラーヴォーカルとのコラボなど、様々な場所、お客様に合わせたコンサート、舞台を企画しています!! 夙川、苦楽園がベースです。 どうぞよろしくおねがいいたします。
2017年10月06日

伊佐山紫文82

 カズオ・イシグロのノーベル賞受賞は当然だと思うし、いちファンとして素直に喜びたい。
 けれど思うのは、文学に賞って必要か?
 新人賞は分かる。
 デビューの場を作ってあげないと世に出る機会がないからね。
 自然科学系の賞もあって良いと思う。
 客観的に今の科学水準を示す指標にはなるだろうから。
 と言うか、今の学会がどのようなパラダイムを公的に採用しているかを公表しているようなものだから、存在意義はあると思う。
 けれど、文学となると……
 そもそも現代人にとって、文学なんて嗜好品でしょ。
 あの作家は下らんが好き、この作家は立派だけど読む気にもならん。
 なんてことが平気で許される世界だし、だからこその文学ではないか。
 どこかの機関が権威づけるようなもんじゃないと思う。
 そもそも今回のノーベル文学賞は政治的な臭いが強すぎる。
 昨年のボブ・ディラン受賞で巻き起こった、あまりにも政治的すぎるという批判をかわす狙いがあったのではないか。
 あまりにも左派に傾きすぎた選考基準という批判をかわすためには、政治的発言をほとんどしない、それでいて人気のある作家を選ばなければならない。
 うってつけじゃん、カズオ・イシグロ!
『浮世の画家』では軍国日本を批判したし、『日の名残り』ではナチ協力の貴族を揶揄ったしで、ノーベル文学賞のアカデミック左派的な基準は満たしている。
『充たされざる者』のような難解でカフカ的な前衛的な作品も書いてるしね。
 そうそう、生命の軽重の根幹に迫る傑作『わたしを離さないで』も忘れてはならない。
 これは世界的ベストセラーになった。
 こういうものもしっかり見てるというアピールにもなる。
 ものすごくうがった見方だとは百も承知、今回のノーベル文学賞は政治的なものだと断言する。
 その上で、カズオ・イシグロのような「子供」の文学が受賞したこと、成熟ではなく、未熟の文学がその価値を認められたことは評価したい。
 同じ英語圏なら、私は絶対にアメリカのコーマック・マッカーシーが受賞するべきだったと思っているが、これは、これまでの選考基準、成熟した大人が主人公の、ガッツリした闘いの物語が評価されてきた歴史があるからである。
 もし、そうじゃなく、子供の、よわよわとした、行きつ戻りつの、何とも言えぬ叙情が評価されるなら、また基準も変わってくる。
 カズオ・イシグロの文学は、主人ではなく召使いの、主人公ではなく脇役の、成功者ではなく失敗者の、苦い記憶を基礎に据える。
 成熟した大人ではなく、子供、あるいは成熟できない大人の文学なのである。
 つまり政治からは最も遠い。
 たとえそれが選ばれた理由だとしても、いちファンとしては素直に喜びたい。
    

Posted by notebook │Comments(0)
このBlogのトップへ
上の画像に書かれている文字を入力して下さい
 
<ご注意>
書き込まれた内容は公開され、ブログの持ち主だけが削除できます。
プロフィール
notebook
notebook
学生の頃から、ホールや福祉施設、商業施設などに呼ばれる形で歌ってきましたが、やはり自分たちの企画で自分たちの音楽をやりたいという思いが強くなり、劇作家・作詞家の伊佐山紫文氏を座付作家として私(浅川)が座長となり、「夙川座」を立ち上げました。

私たちの音楽の特徴は、クラシックの名曲を私たちオリジナルの日本語歌詞で歌うという点にあります。

イタリア語やドイツ語、フランス語などの原語の詩の美しさを楽しみ、原語だからこそ味わえる発声の素晴らしさを聴くことも良いのですが、その一方で、歌で最も大切なのは、歌詞が理解できる、共感できる、心に届くということもあります。

クラシック歌曲の美しい旋律に今のわたしたち、日本人に合った歌詞をつけて歌う、聴くことも素敵ではないかと思います。

オリジナル歌詞の歌は50曲を超え、自主制作のCDも十数枚になりました。

2014年暮れには、梅田グランフロント大阪にある「URGE」さんで、なかまとオリジナル歌詞による夢幻オペラ「幻 二人の光源氏」を公演いたしました。

これらの活動から、冗談のように「夙川座」立ち上げへと向かいました。

夙川は私(浅川)が関西に来て以来、10年住み続けている愛着のある土地だからです。
地元の方々に愛され、また、夙川から日本全国に向けて、オリジナル歌詞によるクラシック歌謡の楽しい世界を広げていきたいという思いを込めています。

< 2025年04月 >
S M T W T F S
    1 2 3 4 5
6 7 8 9 10 11 12
13 14 15 16 17 18 19
20 21 22 23 24 25 26
27 28 29 30      
カテゴリ
QRコード
QRCODE
アクセスカウンタ
読者登録
メールアドレスを入力して登録する事で、このブログの新着エントリーをメールでお届けいたします。解除は→こちら
現在の読者数 0人