2018年05月30日
伊佐山紫文171
『国家の神話』
エルンスト・カッシーラー著 宮田光男訳 講談社学術文庫
神話的思考は政治的に克服さるべきである、なのに祖国ドイツでは国家的神話(ナチズム)の嵐が吹き荒れ、知識人までもが踊らされている。
新カント派の大哲学者カッシーラーは、亡命先のアメリカで、政治的神話の淵源を古代ギリシャにまで求め、極めて客観的なマキャベリ論を経て、現代の神話(ナチズム)に切り込んでいく。
曰く、政治的神話は克服され、科学に席を譲るべきである。
そこにはキャンベル流の、神話は人生を豊かにする、みたいな甘さは微塵もない。
そりゃそうだ、現代の神話(ナチズム)によってユダヤ人は絶滅させられようとしているのだから。
けれどカッシーラーも認めているのは、神話は危機の思考だと言うこと。
万事平穏で済んでいれば、つまり平時の理性で片がついていれば、人は神話など求めはしない。
人生や、国家が危機に至ったとき、理性ではどうしようもない現実にぶつかったとき、人は、人々は、神話を求め、そこにすがる(日本でも巫女が出てくるのは、共同体が危機に陥ったときだけだ。占いだって、幸せならあんなものに金を使わない)。
それを弱さと見るのか、人間の豊かさと見るのか。
訳者による長い解説を含めて600ページを超す本書の全てのページのなかに、私はカッシーラーの迷いを見、その迷いに、僭越ながら共感する。
評論家と詩人との間を、ピンボールのように跳ね返りながら、結局、どこへも行けなかった我が生涯と、大哲学者の遺著を重ね合わせる不遜に身を震わせながら、やはり共感する。
今時、こんな浩瀚な(でも読みやすい)哲学書を文庫化してくれた編集部に感謝。
エルンスト・カッシーラー著 宮田光男訳 講談社学術文庫
神話的思考は政治的に克服さるべきである、なのに祖国ドイツでは国家的神話(ナチズム)の嵐が吹き荒れ、知識人までもが踊らされている。
新カント派の大哲学者カッシーラーは、亡命先のアメリカで、政治的神話の淵源を古代ギリシャにまで求め、極めて客観的なマキャベリ論を経て、現代の神話(ナチズム)に切り込んでいく。
曰く、政治的神話は克服され、科学に席を譲るべきである。
そこにはキャンベル流の、神話は人生を豊かにする、みたいな甘さは微塵もない。
そりゃそうだ、現代の神話(ナチズム)によってユダヤ人は絶滅させられようとしているのだから。
けれどカッシーラーも認めているのは、神話は危機の思考だと言うこと。
万事平穏で済んでいれば、つまり平時の理性で片がついていれば、人は神話など求めはしない。
人生や、国家が危機に至ったとき、理性ではどうしようもない現実にぶつかったとき、人は、人々は、神話を求め、そこにすがる(日本でも巫女が出てくるのは、共同体が危機に陥ったときだけだ。占いだって、幸せならあんなものに金を使わない)。
それを弱さと見るのか、人間の豊かさと見るのか。
訳者による長い解説を含めて600ページを超す本書の全てのページのなかに、私はカッシーラーの迷いを見、その迷いに、僭越ながら共感する。
評論家と詩人との間を、ピンボールのように跳ね返りながら、結局、どこへも行けなかった我が生涯と、大哲学者の遺著を重ね合わせる不遜に身を震わせながら、やはり共感する。
今時、こんな浩瀚な(でも読みやすい)哲学書を文庫化してくれた編集部に感謝。
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