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2018年11月02日

伊佐山紫文212

 安田純平さんが解放されて本当に良かった。
 私も若い頃は国際ジャーナリストにあこがれ、あわよくばどこかの抵抗組織に捕まって内部情報をスクープ出来たら、などと下らぬ妄想に浸っていたことがある。
 ゲリラとか、反体制派とか、そういうのにロマン主義的な親近感を感じていたものだから、決してこちらを粗略には扱わないだろうと、勝手に思い込んでいたのである。
 そういう思い込みの犠牲になりかけた話。
 30年以上前、一緒に仕事をしていたイラストレーターの男。
 その男もまた、若い頃にはロマン主義的な理想を抱いて世界を放浪していた。
 で、軍事クーデターで軍が政権を握った、とある南米の国に潜入した。
 日本人は珍しいものだからすぐにワラワラと人が寄ってくる。
 市場でビールでも飲まないか、と。
 応じて、青空の下、片言の英語で談笑しながら気持ちよく飲んでいると、突然、大地を揺るがす轟音と共に、戦車がやってきた。
 マシンガンを肩にかけた兵士たちも小走りで。
 一緒に飲んでいた男たちは瞬時にして消え、そいつだけが残された。
 兵士たちはそいつを取り囲み、スペイン語で緊張したやりとりを続けている。
 そいつは死を覚悟した。
 それも、まともな死ではない。
 噂に聞く、軍部による拷問死……
 爪を全て剥がされ、歯を抜かれ、目玉をくりぬかれ、睾丸を喉に詰まらせての窒息死……
 ところが、連行された基地で待っていたのは暖かい抱擁だった。
「良かった、本当に良かった」と口々に言われる。
 一緒にビールを飲んでいた男たちは、現地では知らぬ者のないギャングで、外国人観光客を身ぐるみ剥いで殺すのをなりわいにしているのだという。
 しかもゲリラとしての顔もあるから、重武装していて警察では手に負えないのだという。
 日本人がギャングに捕まっている、という通報があったものの、警察は及び腰で、それなら、と、軍隊の出動となったわけだ。
 今度は兵士たちとビールを飲みながら、拷問死の話をすると、大笑いして、それはギャングの手口だという。
 裏切り者をそうやって殺すのだと。
 先進国のマスコミはゲリラの言うことを真に受けすぎる、自分らのやっていることを相手のせいにするのは左翼の常套手段だろ、と。
 そいつはワケがわからなくなって、早々にその国を引き揚げた。
 今、何をやってるかは知らない。
 日田の実家にはそいつの書いた色紙がある。
「色即是空」
 の文字が添えられている。
 一体何を悟ったのかは知らないが、作品としてはなかなか良い。
 とにかく、そうそう簡単に情報を信用してはならないということだ。
 今回、国際的な力学の中、サウジ記者の殺害など、色々な偶然も重なって、安田さんの解放に至ったのだろうが、本当に良かった。
 空即是色。
 

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プロフィール
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学生の頃から、ホールや福祉施設、商業施設などに呼ばれる形で歌ってきましたが、やはり自分たちの企画で自分たちの音楽をやりたいという思いが強くなり、劇作家・作詞家の伊佐山紫文氏を座付作家として私(浅川)が座長となり、「夙川座」を立ち上げました。

私たちの音楽の特徴は、クラシックの名曲を私たちオリジナルの日本語歌詞で歌うという点にあります。

イタリア語やドイツ語、フランス語などの原語の詩の美しさを楽しみ、原語だからこそ味わえる発声の素晴らしさを聴くことも良いのですが、その一方で、歌で最も大切なのは、歌詞が理解できる、共感できる、心に届くということもあります。

クラシック歌曲の美しい旋律に今のわたしたち、日本人に合った歌詞をつけて歌う、聴くことも素敵ではないかと思います。

オリジナル歌詞の歌は50曲を超え、自主制作のCDも十数枚になりました。

2014年暮れには、梅田グランフロント大阪にある「URGE」さんで、なかまとオリジナル歌詞による夢幻オペラ「幻 二人の光源氏」を公演いたしました。

これらの活動から、冗談のように「夙川座」立ち上げへと向かいました。

夙川は私(浅川)が関西に来て以来、10年住み続けている愛着のある土地だからです。
地元の方々に愛され、また、夙川から日本全国に向けて、オリジナル歌詞によるクラシック歌謡の楽しい世界を広げていきたいという思いを込めています。

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