オリジナル脚本のオペレッタや、朗読とのコラボ、ポピュラーヴォーカルとのコラボなど、様々な場所、お客様に合わせたコンサート、舞台を企画しています!! 夙川、苦楽園がベースです。 どうぞよろしくおねがいいたします。
2019年03月10日

伊佐山紫文294

『天涯の子ら』 諌山陽太郎著 鳥影社
 しみじみと読み返して、なんて若かったんだと反省する部分もあり、それでもあの時にしか書けなかった文章を嘗めるように味わっている。
 当初、物語の舞台の一つである大分県日田地方の方言を忠実に保存するという意図もあって、主人公由美の実家(日田の豆田町という設定)の両親や親戚の言葉は本物の日田弁で書かれていた。
 由美の連れ合いであり、複雑な家族背景を持つ真一は阪神間の言葉を話す。
 二人が出会うのは関西学院大学という設定である。
 だから、会話には標準語のひとかけらも出てこない。
 ここに編集者は懸念を示した。
 公平を期して言っておくが、この編集者は関西出身である。
 だからこそ、これでは全国の読者を獲得できないと、本人の経験から苦言を呈してくれたのである。
 ここで突っぱねるほど若くはなかったので、出来る限り訂正した。
 主人公とその不倫相手との濡れた会話は全面的に標準語に改めた。
 エロさが半分になってしまったが、仕方ない。
 ところが次の段階で問題になったのが、主人公の母親が朝鮮半島の出自であること、そして、その連れ合いの真一の母親が被差別部落出身であること。
 しかも障害者の腹違いの姉が出てきて、それを「カタワ」と蔑むアル中の母親……
 どこを切ってもタブーに触れる内容で、結局はお蔵入りになりかけた。
 大手の出版社なんてそんなものだ。
 今読んでも当時のタブーの展覧会みたいな小説で、私が編集者だとしても二の足を踏む。
 だからこそ書きたかったんだし、上梓に向けて努力もした。
 結局は初版だけで絶版になってしまったが、古書としては結構な値がついている。
 かと言って、これはまだ私がまだ左翼の殻を尻につけた時代の作品で、増刷しようとかは全く思わないが、ここで紹介したことで、古書の数冊が売れた。
 買ってくれた皆さん、有り難うございます。
 これを励みに頑張ります。


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プロフィール
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学生の頃から、ホールや福祉施設、商業施設などに呼ばれる形で歌ってきましたが、やはり自分たちの企画で自分たちの音楽をやりたいという思いが強くなり、劇作家・作詞家の伊佐山紫文氏を座付作家として私(浅川)が座長となり、「夙川座」を立ち上げました。

私たちの音楽の特徴は、クラシックの名曲を私たちオリジナルの日本語歌詞で歌うという点にあります。

イタリア語やドイツ語、フランス語などの原語の詩の美しさを楽しみ、原語だからこそ味わえる発声の素晴らしさを聴くことも良いのですが、その一方で、歌で最も大切なのは、歌詞が理解できる、共感できる、心に届くということもあります。

クラシック歌曲の美しい旋律に今のわたしたち、日本人に合った歌詞をつけて歌う、聴くことも素敵ではないかと思います。

オリジナル歌詞の歌は50曲を超え、自主制作のCDも十数枚になりました。

2014年暮れには、梅田グランフロント大阪にある「URGE」さんで、なかまとオリジナル歌詞による夢幻オペラ「幻 二人の光源氏」を公演いたしました。

これらの活動から、冗談のように「夙川座」立ち上げへと向かいました。

夙川は私(浅川)が関西に来て以来、10年住み続けている愛着のある土地だからです。
地元の方々に愛され、また、夙川から日本全国に向けて、オリジナル歌詞によるクラシック歌謡の楽しい世界を広げていきたいという思いを込めています。

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