オリジナル脚本のオペレッタや、朗読とのコラボ、ポピュラーヴォーカルとのコラボなど、様々な場所、お客様に合わせたコンサート、舞台を企画しています!! 夙川、苦楽園がベースです。 どうぞよろしくおねがいいたします。
2019年09月22日

伊佐山紫文394

子育てをしていると、どうしても、息子と自分の少年時代とを重ねてしまう。
 それは良いのだが、自分がして欲しかったことを息子にやろうとしてしまう。
 ピアノ、書道、英語……
 そりゃ、やっていれば、将来、なんかの役に立つだろうが、その「将来」とやらが、親にどれほど見通せているのかって話。
 私は基本、放任の野放しだった。
 親は悪しき戦後教育の産物で、子どもの自主性だの自由だのを奉じて、結局は無責任にほったらかした。
 と言うより、まず父親は、この資本主義の世の中があと十年も続くとは思っていないものだから、子どもの教育よりもこの世の変革に情熱を注いだ。
「将来」の見通しがそもそも狂っていたのだ。
 母親は、女学校始まって以来の才女と言われ、自分から勉強をする子だったので、まさか我が子が、言われなければ宿題もやらないとは思いもしなかった。
 勝手にやってるだろうとチェックもしない。
 で、学校に言われてキレる。
 その繰り返し。
 現実には、学校の宿題を家でやったことなど一度もなく、すべて居残りだった。
 その頃(小4~小6)の担任は教員だった母の元同僚で、なまじ私の家庭事情を知っているものだから、敢えて介入することはなかった。
 小3で、すでに教員を一人辞めさせた、前科のある子どもである。
 しかも、親も親である。
 とにかく関わるのも面倒くさい。
 放っておけ。
 今では、この人たちの気持ちが手に取るように分かる。
 実は、息子が3歳になっても一言も発せず、これはおかしいと文献を漁りはじめ「ギフテッド」という存在にたどり着いた。
 一言で言えば「才能を与えられた(ギフテッド)子」ということなのだが、この「才能」と言うのがやっかいで、決してこれを持たされた子に幸福をもたらすようなものではない。
 息子の場合、パズルを解いたり、ものを組み立てたりするのは、同世代の子よりも圧倒的に勝っていたのだが、言葉が無い。
 アインシュタインやファインマン、日本では湯川秀樹など、ノーベル賞をとるような物理学者が幼少期、言葉が遅かったことを心配されたことはよく知られていて、そこから調べて、おそらくは理系の「ギフテッド」だろうと当たりをつけた。
 で、その過程で、我がことに思い至った。
 私はルービックキューブを自力で6面揃えることが出来る。
 別になんてことの無いアルゴリズムで、時間はかかるが、単なる物理的な作業である。
 これが実は大変なことだと、妻が1面も整えられないのを見て、初めて気づいた。
 私は常人ではない。
 私も「ギフテッド」の一人なのだ。
 それも、育て方を間違えられた。
 父も、母も、常人ではなく「ギフテッド」だったのだ。
 それも、戦争と戦後という時代の中で、育て方を間違えられた「ギフテッド」。
 これに気づいたとき、スーッと、自分の人生の来し方が見通せたような気がした。
 そして、我が子の行く末もスーッと見えてきた、ような気がした。
 実は悲しいことに、ほとんどの「ギフテッド」には悲惨な将来しか待っていない。
 実際、私の父母は二人ともアル中で亡くなったし、何より「バカと天才は紙一重」などという格言もあるくらいだ。
 この世は「ギフテッド」のために出来てはいない。
 だから「ギフテッド」はどの時点かで必ずドロップアウトする。
 私は小3で学校と全面戦争してドロップアウトしたし、少年院の子どもたちは平均よりもIQが高いという調査結果もある。
 これは大変だと、息子が幼稚園の年中さんの頃から、市の教育委員会や入学予定の小学校に話をして、何とかドロップアウトだけは避けようとしてきた。
 今では小6にもなって、クラスではほとんど一言も発せずにいるから、もしかしたらドロップアウトしてるかも知れないが、それでも妙な軋轢はないようだ。
 立志伝中の天才の多くが悲惨な末路を迎えているのは他人事ではない。
 だからこそ、ピアノ、書道、英語……となるのだが、人の言うことを聞かないのが「ギフテッド」の常で、どうしたもんか。

同じカテゴリー(伊佐山紫文)の記事画像
11月21日日曜日大阪で上方ミュージカル!
11月21日(日)大阪にて、舞台「火の鳥 晶子と鉄幹」
伊佐山紫文366
伊佐山紫文360
伊佐山紫文359
伊佐山紫文357
同じカテゴリー(伊佐山紫文)の記事
 11月21日日曜日クレオ大阪中央ホール14時開演「火の鳥 晶子と鉄幹」手話PR動画 (2021-11-03 16:24)
 11月21日日曜日大阪で上方ミュージカル! (2021-07-24 21:33)
 11月21日(日)大阪にて、舞台「火の鳥 晶子と鉄幹」 (2021-07-22 16:26)
 夙川座のyutube,273回目です。 (2021-02-18 23:03)
 夙川座のyoutube,272回目です。 (2021-02-15 17:09)
 夙川座のyoutube,271回目です。 (2021-02-15 17:05)
上の画像に書かれている文字を入力して下さい
 
<ご注意>
書き込まれた内容は公開され、ブログの持ち主だけが削除できます。
プロフィール
notebook
notebook
学生の頃から、ホールや福祉施設、商業施設などに呼ばれる形で歌ってきましたが、やはり自分たちの企画で自分たちの音楽をやりたいという思いが強くなり、劇作家・作詞家の伊佐山紫文氏を座付作家として私(浅川)が座長となり、「夙川座」を立ち上げました。

私たちの音楽の特徴は、クラシックの名曲を私たちオリジナルの日本語歌詞で歌うという点にあります。

イタリア語やドイツ語、フランス語などの原語の詩の美しさを楽しみ、原語だからこそ味わえる発声の素晴らしさを聴くことも良いのですが、その一方で、歌で最も大切なのは、歌詞が理解できる、共感できる、心に届くということもあります。

クラシック歌曲の美しい旋律に今のわたしたち、日本人に合った歌詞をつけて歌う、聴くことも素敵ではないかと思います。

オリジナル歌詞の歌は50曲を超え、自主制作のCDも十数枚になりました。

2014年暮れには、梅田グランフロント大阪にある「URGE」さんで、なかまとオリジナル歌詞による夢幻オペラ「幻 二人の光源氏」を公演いたしました。

これらの活動から、冗談のように「夙川座」立ち上げへと向かいました。

夙川は私(浅川)が関西に来て以来、10年住み続けている愛着のある土地だからです。
地元の方々に愛され、また、夙川から日本全国に向けて、オリジナル歌詞によるクラシック歌謡の楽しい世界を広げていきたいという思いを込めています。

< 2025年05月 >
S M T W T F S
        1 2 3
4 5 6 7 8 9 10
11 12 13 14 15 16 17
18 19 20 21 22 23 24
25 26 27 28 29 30 31
カテゴリ
QRコード
QRCODE
アクセスカウンタ
読者登録
メールアドレスを入力して登録する事で、このブログの新着エントリーをメールでお届けいたします。解除は→こちら
現在の読者数 0人