2019年09月26日
伊佐山紫文402
『バイオフィリア 人間と生物の絆』
E・O・ウィルソン著 狩野秀之訳
ちくま学芸文庫
大著『社会生物学』を上梓して大論争を巻き起こし、忽然と自らのフィールドであるジャングルに消えた進化生物学者E・O・ウィルソンが、今度は極めて穏やかな口調で、格調高く自然保護思想を説いた小著。
なぜ「自然」は、「種」は、そして「生命多様性」は保護されなければならないのか。
本書のどこにも明確な答えはない。
ただ、人間の本性として、生物への愛「バイオフィリア」というものがあるのではないか、と静かに問いかける。
訳者が「文庫版への訳者あとがき」でも述べられているように、この「バイオフィリア」という語は、最近『愛するということ』の新訳が出て再び注目されている、エーリッヒ・フロムの『悪について』の「バイオフィリア」とは全く意味が違う。
フロムの「バイオフィリア」は「ネクロフィリア(死への志向性)」の対語で、「生への志向性」とでも訳すべきもの、背景には心理学者らしくフロイトの「死の欲動」と「生の欲動」があり、だから単独では意味を成さない。
著者も本文で言うように、ウィルソンの「バイオフィリア」の背景にあるのはイーフー・トゥアンの『トポフィリア』である。
とにかく人間には懐かしくてたまらない場所があり、そのような感情をトゥアンは「トポフィリア(場所への愛)」と呼んだ。
とにかくそのような性向が人間にはあるのだ、と。
これは何かと対になった概念ではない。
ウィルソンの「バイオフィリア」もそうで、例えば犬や猫を眺めて思わず笑みをこぼしてしまうような、どうしようもない性向が人間にはある。
そこをベースに自然保護の倫理を構築すべきだと、困難な道を承知で主張する。
小さな、静かな、そして力強い主張に満ちた一冊である。
E・O・ウィルソン著 狩野秀之訳
ちくま学芸文庫
大著『社会生物学』を上梓して大論争を巻き起こし、忽然と自らのフィールドであるジャングルに消えた進化生物学者E・O・ウィルソンが、今度は極めて穏やかな口調で、格調高く自然保護思想を説いた小著。
なぜ「自然」は、「種」は、そして「生命多様性」は保護されなければならないのか。
本書のどこにも明確な答えはない。
ただ、人間の本性として、生物への愛「バイオフィリア」というものがあるのではないか、と静かに問いかける。
訳者が「文庫版への訳者あとがき」でも述べられているように、この「バイオフィリア」という語は、最近『愛するということ』の新訳が出て再び注目されている、エーリッヒ・フロムの『悪について』の「バイオフィリア」とは全く意味が違う。
フロムの「バイオフィリア」は「ネクロフィリア(死への志向性)」の対語で、「生への志向性」とでも訳すべきもの、背景には心理学者らしくフロイトの「死の欲動」と「生の欲動」があり、だから単独では意味を成さない。
著者も本文で言うように、ウィルソンの「バイオフィリア」の背景にあるのはイーフー・トゥアンの『トポフィリア』である。
とにかく人間には懐かしくてたまらない場所があり、そのような感情をトゥアンは「トポフィリア(場所への愛)」と呼んだ。
とにかくそのような性向が人間にはあるのだ、と。
これは何かと対になった概念ではない。
ウィルソンの「バイオフィリア」もそうで、例えば犬や猫を眺めて思わず笑みをこぼしてしまうような、どうしようもない性向が人間にはある。
そこをベースに自然保護の倫理を構築すべきだと、困難な道を承知で主張する。
小さな、静かな、そして力強い主張に満ちた一冊である。
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