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2019年11月10日

伊佐山紫文440

ラジオで「冷戦」期のクラシック音楽事情について話をすることになったわけで、まあ、その頃の演奏を紹介すれば、番組的にはそれで良いわけなんだけど、それだけではすまないのが小理屈人間のサガである。
「冷戦」と言っても、その内実は東ドイツとソ連では全く異なっている。
 そもそもがこの二国は第二次世界大戦の主戦場の敗戦国と戦勝国である。
 私たちは第二次世界大戦を太平洋戦争と呼び、まるでアジアが主戦場であったかのように思いがちだが、実態はまるで違う。
 犠牲者の数を見ても、太平洋戦争では百万単位だが(これでも凄まじいが)、独ソ戦は一桁違う千万単位、数え方では億に届く。
 ドイツはロシア人を「ウンターメンシュ」(劣等人種)と思い込み、奴隷化するために絶滅戦争を仕掛けた。
 戦闘員も非戦闘員も女も子供もない、そこにいるスラブ人(ロシア人)は皆殺しか奴隷である。
 当然なことに、ロシア人はそれを、ナポレオンを撃退した「祖国戦争」になぞらえて「大祖国戦争」と呼び、徹底抗戦した。
 でなければ皆殺しか奴隷なのである。
 これは通常の国家同士の戦争ではない。
 だから、フランスなど西側諸国との戦争では機能していた捕虜だの停戦だのと言った約束事など一切ない。
 ただの野蛮な、ただし、近代兵器を使った殺し合いである。
 当然、その終わり方もヒトラーや側近の自殺という、およそ近代戦とは思えない結末で、戦後のベルリンではソ連兵による略奪、殺戮、強姦の嵐が吹き荒れた。
 まさに野蛮である。
 日本人が満州で体験した略奪、殺戮、強姦の嵐はベルリンで味を占めたソ連のお家芸に過ぎなかったのだ。
 このような野蛮の、その後に訪れたのが「冷戦」なのである。
 それが野蛮でないはずがない。
 この野蛮の質も、戦勝国と敗戦国、ロシアと東ドイツでは違ってくるが、今回はロシアに限って考えてみる。
 冷戦とそれに伴うジダーノフ批判の淵源は、様々に指摘されようが、私は、マルクス主義の教義そのものにあると思う。
 レーヴィットが指摘するように、マルクス主義は「真理」の概念を根底から覆した。
 人はよく「この時代にはこの思想を」と、たとえば「AI時代になったんだから、発想を転換しないと」などと言ったりするが、これはすべてマルクス主義である。
 マルクス以前には、真理は一つであり、時代によって変化するものではなかった。
 ヘーゲルは「ツァイト・ガイスト」(時代精神)を説いたが、それは真理へと至る運動としてであった。
 マルクスは経済的な土台の上に、それに応じた思想や考え方が生じると主張した。
 古代には古代の、中世には中世の、近代には近代の、それぞれの経済状況に応じた思想や考え方が生じる。
 まあ、それはそうだろうし、一面の事実をついてもいる。
 ただし、これを教義化した連中が権力を握るとどうなるか。
 資本主義にはそれに応じたブルジョア芸術がある。
 我々が築き上げたこの社会主義社会にはそれに応じた社会主義芸術があるはずだ。
 それ以外はブルジョアだ、退廃だ、と。
 問題は、その、社会主義に応じた芸術の定義を誰がするかと言うことで、そりゃ、共産党以外にありえない。
 共産党が全てを決める。
 共産党が認めた以外の芸術は全て退廃であり、その作者は収容所送りで、実質的な死刑である。
 そもそもが祖国大戦争を勝ち抜いたスターリンの共産党である。
 正しくないわけがない。
 命の重さも軽い。
 祖国大戦争では何千万もの同胞が犠牲になった。
 芸術家一人の命などなんぼのもんじゃ。
 こんな時代、こんな社会を、皆さん、どうやって生き延びますか。
 私は生き延びた人々、生き延びた芸術を、決して迎合だとは思わないし、思ってはいけないと思っている。
 むしろ、よく生き延びた、と愛おしくさえ思う。
 私が「冷戦」にこだわる理由でもある。

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プロフィール
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学生の頃から、ホールや福祉施設、商業施設などに呼ばれる形で歌ってきましたが、やはり自分たちの企画で自分たちの音楽をやりたいという思いが強くなり、劇作家・作詞家の伊佐山紫文氏を座付作家として私(浅川)が座長となり、「夙川座」を立ち上げました。

私たちの音楽の特徴は、クラシックの名曲を私たちオリジナルの日本語歌詞で歌うという点にあります。

イタリア語やドイツ語、フランス語などの原語の詩の美しさを楽しみ、原語だからこそ味わえる発声の素晴らしさを聴くことも良いのですが、その一方で、歌で最も大切なのは、歌詞が理解できる、共感できる、心に届くということもあります。

クラシック歌曲の美しい旋律に今のわたしたち、日本人に合った歌詞をつけて歌う、聴くことも素敵ではないかと思います。

オリジナル歌詞の歌は50曲を超え、自主制作のCDも十数枚になりました。

2014年暮れには、梅田グランフロント大阪にある「URGE」さんで、なかまとオリジナル歌詞による夢幻オペラ「幻 二人の光源氏」を公演いたしました。

これらの活動から、冗談のように「夙川座」立ち上げへと向かいました。

夙川は私(浅川)が関西に来て以来、10年住み続けている愛着のある土地だからです。
地元の方々に愛され、また、夙川から日本全国に向けて、オリジナル歌詞によるクラシック歌謡の楽しい世界を広げていきたいという思いを込めています。

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