「夙川座」やってます!

オリジナル脚本のオペレッタや、朗読とのコラボ、ポピュラーヴォーカルとのコラボなど、様々な場所、お客様に合わせたコンサート、舞台を企画しています!! 夙川、苦楽園がベースです。 どうぞよろしくおねがいいたします。
2017年10月03日

伊佐山紫文78

 日本にはユダヤ教やキリスト教やイスラム教のような唯一神はいない。
 だからといって無信仰ではないことは、正月やお盆がくればわかる。
 神や仏はそこらじゅうにいる。
 そして、そこらじゅうにいる神や仏を探すのが日本の「詩」なのである。
 神や仏を探す、その姿勢は「情景描写」として詩の上に現れる。
 たとえば、

 古池や蛙飛びこむ水の音
 
 芭蕉の最も知られた句であるが、ここには情景描写しかない。
 苦悩であるとか、神への渇仰であるとか、そういう、西洋の詩にあるような「内面性」を全く欠く。
 こういうところから桑原武夫の「第二芸術論」などが生まれて来たのだろうが、ナンセンスも甚だしい。
 ただし、白状すれば、桑原の『第二芸術論』(講談社学術文庫)は学生時代、私の愛読書であり、俳句では現代人の人生は描けない、という論旨に一定の説得力があったのは事実である。
 人生を描くのが芸術なのかどうか、その芸術に第一や第二があるのか、それはそれとして、もし神や仏を探し求めるのが日本の詩だという私の説が正しければ、この芭蕉の句はまさに詩の中の詩としなければならないだろう。
 ここでは「死」と「生」が架橋されており、まさに神や仏が描かれているのである。
 細かく見ていこう。
「古池」とは、もうすっかり忘れ去られ、うち捨てられた死んだ池である。
 生きている池ならば、ただの「池」ですむ。
 そうではない、誰も関心を払わないような死んだ「古池」。
 この死の世界に、蛙が飛び込む。
 春の季語である「蛙」が死の世界である「古池」に「飛びこ」んで、「水の音」を立てる。
 芭蕉はここに「死」の冬から「生」の春への架橋を聴く。
「死」から「生」が生じる。
 まさに、神や仏の世界である。
 神や仏を、自らの内面にではなく、外界に探す。
 これが「情景描写」として現れ、ポエジーをなす。
 日本人は情景を描くことで神や仏を探し、安らぎを得る。
 たとえば『古今』『新古今』のほとんどの歌は「情景描写」で成立しており、そうではない歌を探すのが大変な程である。
「情景描写」こそ、日本のポエジーの本質なのである。
 ところが、戦後、現代詩はこれを否定したところから出発した。
 それで自滅したとも言えるのだが、詩ではなく、歌詞を見たとき、状況は一変する。
 特に演歌など、日本的な歌詞には情景描写が溢れている。
 というより、情景描写がなければ歌にはならない。
 JASRACが恐ろしいので具体例は差し控えるが。
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プロフィール
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学生の頃から、ホールや福祉施設、商業施設などに呼ばれる形で歌ってきましたが、やはり自分たちの企画で自分たちの音楽をやりたいという思いが強くなり、劇作家・作詞家の伊佐山紫文氏を座付作家として私(浅川)が座長となり、「夙川座」を立ち上げました。

私たちの音楽の特徴は、クラシックの名曲を私たちオリジナルの日本語歌詞で歌うという点にあります。

イタリア語やドイツ語、フランス語などの原語の詩の美しさを楽しみ、原語だからこそ味わえる発声の素晴らしさを聴くことも良いのですが、その一方で、歌で最も大切なのは、歌詞が理解できる、共感できる、心に届くということもあります。

クラシック歌曲の美しい旋律に今のわたしたち、日本人に合った歌詞をつけて歌う、聴くことも素敵ではないかと思います。

オリジナル歌詞の歌は50曲を超え、自主制作のCDも十数枚になりました。

2014年暮れには、梅田グランフロント大阪にある「URGE」さんで、なかまとオリジナル歌詞による夢幻オペラ「幻 二人の光源氏」を公演いたしました。

これらの活動から、冗談のように「夙川座」立ち上げへと向かいました。

夙川は私(浅川)が関西に来て以来、10年住み続けている愛着のある土地だからです。
地元の方々に愛され、また、夙川から日本全国に向けて、オリジナル歌詞によるクラシック歌謡の楽しい世界を広げていきたいという思いを込めています。

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