2020年01月24日
伊佐山紫文511
『21 Lessons: 21世紀の人類のための21の思考』
ユヴァル・ノア・ハラリ著 柴田裕之訳 河出書房新社
書店で平積みになっているベストセラーは人生論か何かの愚本だと決めつけているあなた、最近はそうでもなくなってきていることを、この本で確かめてください。
同じく平積みになっているピンカー『21世紀の啓蒙』には及ばないが、この世界の現状を深く掘り下げた名著だと思う。
ピンカーは元々言語学者・心理学者であり白衣の実験現場にも通じているのに対し、ハラリは純粋の歴史学者であり、それ故の限界がある。
その弱点が集中的に現れているのが「バイオテクノロジー」についての予測である。
たとえば「不老不死」が、金さえ出せば可能、みたいな記述がある。
確かに、ハラリは具体的な言及は避けているが、細胞分裂の回数を制限している「テロメア」と呼ばれる遺伝子を操作すれば、永遠に分裂を繰り返す体細胞を作ることも可能だろう(自然界にもそれはある。悪性新生物、いわゆるガンだ)。
ただし、何兆とある細胞全ての遺伝子を組み換える必要があるし、そもそも脳や心臓は分裂していないから、それ固有の約120年という寿命がある。
心臓は人工心臓と入れ替えるとしても、脳の機能を電脳に移し替えるとしたら、量子コンピュータが実現したとしても莫大な敷地と電力が必要になる。
私は大学院まで生物学を学んだから、そういう細かいことが気になってしまうが、普通に読めば、人類が直面する課題に真摯に向き合った名著であり、得るところは大だろう。
一例を挙げよう。
自動車の自動運転が話題になっているが、ここにハラリは古典的な倫理学の問題を見いだす。
自動運転中、目の前に飛び出してきた子供二人を避け、反対車線に突っ込んで衝突事故を起こして死ぬかどうか。
ここで、この運転プログラムを作るのに使われるのがどの哲学であるかによって、結論が違ってくる。
利己主義なら避けずに子供をはねるだろう。
功利主義なら二人の命を助けるため運転者一人を犠牲にするだろう。
と、そのようにプログラムするだろう。
ハラリ自身がどう考えているか、是非手に取ってお読みください。
ユヴァル・ノア・ハラリ著 柴田裕之訳 河出書房新社
書店で平積みになっているベストセラーは人生論か何かの愚本だと決めつけているあなた、最近はそうでもなくなってきていることを、この本で確かめてください。
同じく平積みになっているピンカー『21世紀の啓蒙』には及ばないが、この世界の現状を深く掘り下げた名著だと思う。
ピンカーは元々言語学者・心理学者であり白衣の実験現場にも通じているのに対し、ハラリは純粋の歴史学者であり、それ故の限界がある。
その弱点が集中的に現れているのが「バイオテクノロジー」についての予測である。
たとえば「不老不死」が、金さえ出せば可能、みたいな記述がある。
確かに、ハラリは具体的な言及は避けているが、細胞分裂の回数を制限している「テロメア」と呼ばれる遺伝子を操作すれば、永遠に分裂を繰り返す体細胞を作ることも可能だろう(自然界にもそれはある。悪性新生物、いわゆるガンだ)。
ただし、何兆とある細胞全ての遺伝子を組み換える必要があるし、そもそも脳や心臓は分裂していないから、それ固有の約120年という寿命がある。
心臓は人工心臓と入れ替えるとしても、脳の機能を電脳に移し替えるとしたら、量子コンピュータが実現したとしても莫大な敷地と電力が必要になる。
私は大学院まで生物学を学んだから、そういう細かいことが気になってしまうが、普通に読めば、人類が直面する課題に真摯に向き合った名著であり、得るところは大だろう。
一例を挙げよう。
自動車の自動運転が話題になっているが、ここにハラリは古典的な倫理学の問題を見いだす。
自動運転中、目の前に飛び出してきた子供二人を避け、反対車線に突っ込んで衝突事故を起こして死ぬかどうか。
ここで、この運転プログラムを作るのに使われるのがどの哲学であるかによって、結論が違ってくる。
利己主義なら避けずに子供をはねるだろう。
功利主義なら二人の命を助けるため運転者一人を犠牲にするだろう。
と、そのようにプログラムするだろう。
ハラリ自身がどう考えているか、是非手に取ってお読みください。
2020年01月24日
伊佐山紫文510
『ウトヤ島、7月22日』平成30年2018年ノルウェー
監督:エリック・ポッペ 脚本:シヴ・ラジェンドラム・エリアセン
ノルウェーで起きたテロを銃撃が続いたのと同じ72分、ワンカットで描く。
まるで『カメラを止めるな!』の世界、と言ってもいられない。
実話だし。
遙かによく出来てるし。
との前提で言うのだけれど、こういう映画、犯人の思うつぼだと思うんだよね。
この映画によって、局所的テロの局所的恐怖が拡散し、テロの世界的恐怖に生まれ変わったわけだから。
犯人にとっては願ったり叶ったり、ではないのか、という思いを捨てきれない。
それでも見る価値はもちろんある。
★★★★★
監督:エリック・ポッペ 脚本:シヴ・ラジェンドラム・エリアセン
ノルウェーで起きたテロを銃撃が続いたのと同じ72分、ワンカットで描く。
まるで『カメラを止めるな!』の世界、と言ってもいられない。
実話だし。
遙かによく出来てるし。
との前提で言うのだけれど、こういう映画、犯人の思うつぼだと思うんだよね。
この映画によって、局所的テロの局所的恐怖が拡散し、テロの世界的恐怖に生まれ変わったわけだから。
犯人にとっては願ったり叶ったり、ではないのか、という思いを捨てきれない。
それでも見る価値はもちろんある。
★★★★★
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