2018年11月23日
伊佐山紫文231
生物学をベースにした最新の科学、たとえば進化心理学や行動経済学についての一般書を読みあさっている。
なんで、ということはない。
息子の質問が相当に専門性を帯びてきたから、きちんと最新の情報を伝えられるように用意しているというだけの話。
本棚も息子の前に公開している。
「カンブリア紀の大爆発って何?」
と聞いてくれば、生物進化の概説をしながら、グールドの、
『ワンダフルライフ バージェス頁岩と生物進化の物語』
を本棚から出して、
「これを読めば分かる。ただし、今では否定されてる考え方も書かれてるから、最新の学説はネットで調べたら」
という具合。
「韓国と北朝鮮って同じ民族だよね。けど、宇宙から観たら、全然違うっていうけど、それって何?」
と聞いてくれば、ああ、あれのことだな、と、アセモグル&ロビンソンの
『国家はなぜ衰退するのか 権力・繁栄・貧困の起源 上』
を出して、137ページの写真(「韓国の光と北朝鮮の闇」)を示す。
もちろん、まだまだ一般書を読むような力は無いから、そのうち読んだら、というレベルの話ではあるけれど。
そんな息子が昨日は、お風呂で、人類にとって最もラジカルな問いを発した。
「意識って何?」
これはもう、最難関で、一言で答えられるようなものではない。
それは息子にも分かっているらしく、デカルト的に問いを還元してくる。
「動物にも意識ってあるの?」
答えを逡巡していると、さらに還元し、
「カラスって賢いらしいじゃん、だったらカラスって意識はあるのかな」
デネットやサールやハンフリーなど、いわゆる心の哲学を総動員して、
「意識に近いものをもつ動物は確かにいるけれど、意識について意識できる、こういう意識を持つのは人間だけだと思う」
「それはなんで」
「人間だけが言語を持っているからね。言語の最大の特徴は反省できるってこと。反省って言っても、悪いことをしましたって反省じゃないよ。自分の意識についてきちんと考えることが出来るってこと。これは言語がないと出来ない」
「言語かぁ。カラスは言語を持ってないの?」
「人間の言語を言語とするなら、その意味での言語は持ってないだろう」
「もしカラスが言語を持ったら、戦争になるだろうね」
「どうして?」
「地球上に二つの意識は相容れないでしょ」
いや、そんなことは……
と言いかけて、確かにね、と思った。
ネアンデルタール人を滅ぼしたのは間違いなく我々だし、チンパンジーやボノボやゴリラなど、近縁のサルたちを絶滅に追いやりつつあるのも意識を持った我々ホモ・サピエンスである。
おそらくネアンデルタール人の時もそうだったろう、人類は戦うことなく、近縁の種を滅ぼしながら繁栄している。
意識を持つということがニッチ(生態学的地位)の一つなら、確かに地球上に二つの意識は相容れまい。
そういうことを、子供は直感的に掴むのかな。
すぐに答えの出ない問いを次々と発するようになった息子を前に、旧世代はモゴモゴと口ごもるしかないのだろうか。
せめて旧世代の叡智を集めた本棚を作るしかないな。
なんで、ということはない。
息子の質問が相当に専門性を帯びてきたから、きちんと最新の情報を伝えられるように用意しているというだけの話。
本棚も息子の前に公開している。
「カンブリア紀の大爆発って何?」
と聞いてくれば、生物進化の概説をしながら、グールドの、
『ワンダフルライフ バージェス頁岩と生物進化の物語』
を本棚から出して、
「これを読めば分かる。ただし、今では否定されてる考え方も書かれてるから、最新の学説はネットで調べたら」
という具合。
「韓国と北朝鮮って同じ民族だよね。けど、宇宙から観たら、全然違うっていうけど、それって何?」
と聞いてくれば、ああ、あれのことだな、と、アセモグル&ロビンソンの
『国家はなぜ衰退するのか 権力・繁栄・貧困の起源 上』
を出して、137ページの写真(「韓国の光と北朝鮮の闇」)を示す。
もちろん、まだまだ一般書を読むような力は無いから、そのうち読んだら、というレベルの話ではあるけれど。
そんな息子が昨日は、お風呂で、人類にとって最もラジカルな問いを発した。
「意識って何?」
これはもう、最難関で、一言で答えられるようなものではない。
それは息子にも分かっているらしく、デカルト的に問いを還元してくる。
「動物にも意識ってあるの?」
答えを逡巡していると、さらに還元し、
「カラスって賢いらしいじゃん、だったらカラスって意識はあるのかな」
デネットやサールやハンフリーなど、いわゆる心の哲学を総動員して、
「意識に近いものをもつ動物は確かにいるけれど、意識について意識できる、こういう意識を持つのは人間だけだと思う」
「それはなんで」
「人間だけが言語を持っているからね。言語の最大の特徴は反省できるってこと。反省って言っても、悪いことをしましたって反省じゃないよ。自分の意識についてきちんと考えることが出来るってこと。これは言語がないと出来ない」
「言語かぁ。カラスは言語を持ってないの?」
「人間の言語を言語とするなら、その意味での言語は持ってないだろう」
「もしカラスが言語を持ったら、戦争になるだろうね」
「どうして?」
「地球上に二つの意識は相容れないでしょ」
いや、そんなことは……
と言いかけて、確かにね、と思った。
ネアンデルタール人を滅ぼしたのは間違いなく我々だし、チンパンジーやボノボやゴリラなど、近縁のサルたちを絶滅に追いやりつつあるのも意識を持った我々ホモ・サピエンスである。
おそらくネアンデルタール人の時もそうだったろう、人類は戦うことなく、近縁の種を滅ぼしながら繁栄している。
意識を持つということがニッチ(生態学的地位)の一つなら、確かに地球上に二つの意識は相容れまい。
そういうことを、子供は直感的に掴むのかな。
すぐに答えの出ない問いを次々と発するようになった息子を前に、旧世代はモゴモゴと口ごもるしかないのだろうか。
せめて旧世代の叡智を集めた本棚を作るしかないな。
2018年11月23日
伊佐山紫文230
『京都メロウ 金魚のこいびと』平成30年2018年日本
監督:土山久美子 脚本:寒竹泉美
今年鑑賞百本目、京都のイオン桂川で観てきました。
主演は門谷正理さん。
そう!
コープこうべ版『神戸事件始末 瀧善三郎の最期』で高山役をお願いした役者さんです。
話はと言うと、主人公が飼っている金魚が女の子になって、二人で京都の名所を巡り、最後には金魚は元の姿に戻る。
バレると元の姿に戻るんです。
ちゃんと心に残る映画でした。
で、あえて不満を言うと、演出がすべてにおいて上品。
金魚が川に落ちたんなら、もうすこし一生懸命探そうよ。
鴨川にボッシャーンって飛び込んで、這いつくばって潜ろうよ。
5分は探し続けて欲しい。
で、やっと見つかって濡れ鼠のまま部屋に持ち帰り……
ここからは私が作ったならって話
実はこれ、別の金魚。
最初の金魚と同じように、また、いやもっと可愛い(金魚つながりで二階堂ふみが好ましい)女の子が現れ……
……蛇足でしたね。
監督:土山久美子 脚本:寒竹泉美
今年鑑賞百本目、京都のイオン桂川で観てきました。
主演は門谷正理さん。
そう!
コープこうべ版『神戸事件始末 瀧善三郎の最期』で高山役をお願いした役者さんです。
話はと言うと、主人公が飼っている金魚が女の子になって、二人で京都の名所を巡り、最後には金魚は元の姿に戻る。
バレると元の姿に戻るんです。
ちゃんと心に残る映画でした。
で、あえて不満を言うと、演出がすべてにおいて上品。
金魚が川に落ちたんなら、もうすこし一生懸命探そうよ。
鴨川にボッシャーンって飛び込んで、這いつくばって潜ろうよ。
5分は探し続けて欲しい。
で、やっと見つかって濡れ鼠のまま部屋に持ち帰り……
ここからは私が作ったならって話
実はこれ、別の金魚。
最初の金魚と同じように、また、いやもっと可愛い(金魚つながりで二階堂ふみが好ましい)女の子が現れ……
……蛇足でしたね。
2018年11月23日
伊佐山紫文229
『京都メロウ 金魚のこいびと』平成30年2018年日本
監督:土山久美子 脚本:寒竹泉美
今年鑑賞百本目、京都のイオン桂川で観てきました。
主演は門谷正理さん。
そう!
コープこうべ版『神戸事件始末 瀧善三郎の最期』で高山役をお願いした役者さんです。
話はと言うと、主人公が飼っている金魚が女の子になって、二人で京都の名所を巡り、最後には金魚は元の姿に戻る。
バレると元の姿に戻るんです。
ちゃんと心に残る映画でした。
で、あえて不満を言うと、演出がすべてにおいて上品。
金魚が川に落ちたんなら、もうすこし一生懸命探そうよ。
鴨川にボッシャーンって飛び込んで、這いつくばって潜ろうよ。
5分は探し続けて欲しい。
で、やっと見つかって濡れ鼠のまま部屋に持ち帰り……
ここからは私が作ったならって話
実はこれ、別の金魚。
最初の金魚と同じように、また、いやもっと可愛い(金魚つながりで二階堂ふみが好ましい)女の子が現れ……
……蛇足でしたね。
監督:土山久美子 脚本:寒竹泉美
今年鑑賞百本目、京都のイオン桂川で観てきました。
主演は門谷正理さん。
そう!
コープこうべ版『神戸事件始末 瀧善三郎の最期』で高山役をお願いした役者さんです。
話はと言うと、主人公が飼っている金魚が女の子になって、二人で京都の名所を巡り、最後には金魚は元の姿に戻る。
バレると元の姿に戻るんです。
ちゃんと心に残る映画でした。
で、あえて不満を言うと、演出がすべてにおいて上品。
金魚が川に落ちたんなら、もうすこし一生懸命探そうよ。
鴨川にボッシャーンって飛び込んで、這いつくばって潜ろうよ。
5分は探し続けて欲しい。
で、やっと見つかって濡れ鼠のまま部屋に持ち帰り……
ここからは私が作ったならって話
実はこれ、別の金魚。
最初の金魚と同じように、また、いやもっと可愛い(金魚つながりで二階堂ふみが好ましい)女の子が現れ……
……蛇足でしたね。
2018年11月23日
伊佐山紫文228
『名詩名訳ものがたり 異郷の調べ』
亀井俊介、沓掛良彦著
岩波書店
明治・大正篇と昭和・平成篇の二部構成になっている。
もう、圧倒的に明治・大正篇が面白い。
明治・大正篇には、まるで語学と文学が切り離される瞬間に居合わせたような、独特の緊張感が漂っている。
日本の近代詩は翻訳に始まるから、まさに、日本近代詩の出生の現場と言ってもいいだろう。
それが昭和・平成篇では、幸せな離婚を遂げた後の、学者と文学者の仕事のどちらを選ぶかって話になりがちで、正直、どっちだってかまわない。
そのことは昭和・平成篇を担当した沓掛氏にもよく分かっているのだろう。
随所で言葉が上滑りになっている。
亀井俊介、沓掛良彦著
岩波書店
明治・大正篇と昭和・平成篇の二部構成になっている。
もう、圧倒的に明治・大正篇が面白い。
明治・大正篇には、まるで語学と文学が切り離される瞬間に居合わせたような、独特の緊張感が漂っている。
日本の近代詩は翻訳に始まるから、まさに、日本近代詩の出生の現場と言ってもいいだろう。
それが昭和・平成篇では、幸せな離婚を遂げた後の、学者と文学者の仕事のどちらを選ぶかって話になりがちで、正直、どっちだってかまわない。
そのことは昭和・平成篇を担当した沓掛氏にもよく分かっているのだろう。
随所で言葉が上滑りになっている。
2018年11月23日
伊佐山紫文227
『貨幣の「新」世界史 ハンムラビ法典からビットコインまで』
カビール・セガール著 小坂恵理訳
ハヤカワ・ノンフィクション文庫
実務家による「貨幣」の世界史。
と言うか、生命の本質の中に貨幣の発生を読み解くという、壮大で、一瞬、ホンマかいなと思うが、債権債務関係の話からは急に説得力が増していく。
まるでニーチェの『道徳の起源』を思わせるし、カール・ポランニーの経済人類学にも近いものを感じるけれど、どちらにも言及はない。
それより、この人、実務家らしく、新しい見方とか、独自の理論とか、そんなのは一切提示せず、とにかく、膨大な事実を恐ろしい手際の良さで捌いていく。
J・P・モルガンに勤めつつ、しかもジャズのベーシスト、グラミー賞作品のプロデュースまでやりながら、これだけの大著を上梓するって、いったい、アメリカって国はどんだけデカイんだよ。
カビール・セガール著 小坂恵理訳
ハヤカワ・ノンフィクション文庫
実務家による「貨幣」の世界史。
と言うか、生命の本質の中に貨幣の発生を読み解くという、壮大で、一瞬、ホンマかいなと思うが、債権債務関係の話からは急に説得力が増していく。
まるでニーチェの『道徳の起源』を思わせるし、カール・ポランニーの経済人類学にも近いものを感じるけれど、どちらにも言及はない。
それより、この人、実務家らしく、新しい見方とか、独自の理論とか、そんなのは一切提示せず、とにかく、膨大な事実を恐ろしい手際の良さで捌いていく。
J・P・モルガンに勤めつつ、しかもジャズのベーシスト、グラミー賞作品のプロデュースまでやりながら、これだけの大著を上梓するって、いったい、アメリカって国はどんだけデカイんだよ。
2018年11月23日
伊佐山紫文226
『ファスト&スロー あなたの意思はどのように決まるか? 上下』
ダニエル・カールマン著
村井章子訳 友野典男解説
ハヤカワ・ノンフィクション文庫
経済学の前提する、常に合理的な判断をし続ける経済人(ホモ・エコノミクス)など、現実にはいない。
現実の人間の意思決定には癖がある。
たとえば、欲しいッと思うのは一瞬で、この意思決定を行うのがファスト(システム1)。
いやいや、と熟考を始めるのがスロー(システム2)。
ここから派生する二項対立的な概念で、人間の意思決定の癖を暴き出していく。
著者は心理学者なのに、人間のビヘイビア(行動)を基礎にした行動経済学の基礎を作ったとしてノーベル経済学賞を受けている。
人生観が変わるほどの、名著中の名著。
ダニエル・カールマン著
村井章子訳 友野典男解説
ハヤカワ・ノンフィクション文庫
経済学の前提する、常に合理的な判断をし続ける経済人(ホモ・エコノミクス)など、現実にはいない。
現実の人間の意思決定には癖がある。
たとえば、欲しいッと思うのは一瞬で、この意思決定を行うのがファスト(システム1)。
いやいや、と熟考を始めるのがスロー(システム2)。
ここから派生する二項対立的な概念で、人間の意思決定の癖を暴き出していく。
著者は心理学者なのに、人間のビヘイビア(行動)を基礎にした行動経済学の基礎を作ったとしてノーベル経済学賞を受けている。
人生観が変わるほどの、名著中の名著。
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