「夙川座」やってます!

オリジナル脚本のオペレッタや、朗読とのコラボ、ポピュラーヴォーカルとのコラボなど、様々な場所、お客様に合わせたコンサート、舞台を企画しています!! 夙川、苦楽園がベースです。 どうぞよろしくおねがいいたします。
2017年08月14日

伊佐山紫文24

『旅の日のモーツァルト』メーリケ作 宮下健三訳 岩波文庫
 メーリケと言えばフーゴー・ヴォルフの歌曲集で有名だが、詩人はモーツァルトをこよなく愛し、こんな可愛らしい小説を書いてもいる。
『フィガロの結婚』の大成功を受け、マリア・テレジアからの依頼により書かれたのが『ドン・ジョバンニ』であり、この初演のためプラハへ向かう「旅の日」の出来事という設定である。
 暗さのひとかけらもないモーツァルト、可愛らしいばかりのコンスタンチェ、気持ちの良い理解者たち……
 絵空事と言えば身もふたも無いが、近代の暴露趣味よりはよろしいと思う。
 ダ・ポンテが正当な扱いを受けてるのも好感が持てる。
 懐かしいシカネーダーの名前も見える。
 ただし、訳文も解説も古い。
 解説では『フィガロの結婚』がウィーンでも大成功を収めたかのような書き方だが、これは違う。
 ウィーンは、後にフロイトやマーラー、クリムトを生み出すような、いわば性欲の抑圧の上に文化の花を咲かすような街である。
 そんな街が『フィガロの結婚』のような、開けっぴろげなエログロナンセンスに拍手喝采するはずがない。
 おそらく原作の貴族批判も問題視されたのだろう、早々に打ち切られたというのが実態だ。
 ところが、ウィーンが東京なら、プラハは大阪。
 東京では敬遠されるような下品な下ネタも、大阪でなら受ける。
 で、プラハでは『フィガロの結婚』は大成功を収め、マリア・テレジアからの依頼も舞い込んだ。
 これが『ドン・ジョバンニ』として結実し「旅の日」につながって行くというわけ。
 
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2017年08月14日

伊佐山紫文23

『CO・OPステーション』という、コープこうべの店頭に置いてある雑誌の今月号(9月号)に『神戸事件始末 瀧善三郎の最期』の記事が三本載っている。
 集客の最後の追い上げになんとか結びついて欲しいものだ。
 祈るような気持ちで、店頭の雑誌を眺めている。
 これまで何度も書いてきたように、この雑誌との関わりが、私の物書きとしての人生を確定した。
 この雑誌に関わるまで、私は自分の文章を、自分の表現として書いたことはなかった。
 あくまでもスポンサーの意向を体現するものとして、スポンサーの方だけを向いて書いてきた。
 それが自分の表現だと思ったことなどないし、どれだけ評価されようと、評価されまいと、なんの喜びも痛みもない、はぁそうですか、と言った感じ。
 スポンサーとの軋轢はあるにはあったが、それはスケジュールや予算の問題で、表現の内容を巡るものでは無かった。
 けれど、『ライフステーション』は違った(『CO・OPステーション』と表記すべきなのだろうが、私にとってはあくまでも『ライフステーション』なので、そう書かせていただく)。
 当時の角川書店の編集長から「お前の好きにやれ」とのお墨付きをもらい、灘神戸生協(現コープこうべ)の当時の統括からも「アンタの好きにやれ」と言われ、自分の表現として記事を書き、スポンサーである生協ともガチで渡り合った。
 誌面があまりにも私の記事ばかりになってはマズイと言うことで、筆名も四つ使い、とにかく書いた。
 書きまくった。
 二年間、とにかく書いた。
 で、ふと、虚しくなった。
 書いても書いても、書き流し。
 次の月が来て、新しい号が出れば、すべて忘れ去られる。
 雑誌の記事っていったい何なんだ、と。
 そんなとき、書き下ろしの本を書かないかとの話があった。
 かつて私が受験し、落ちた出版社からの依頼である。
 もちろん乗った。
 なにしろ「本」である。
 毎月毎月出ては消えて行く雑誌とは違う。
 きちんと残っていく「本」である。
 私は『ライフステーション』を捨て、「本」を取った。
 もちろんベストセラーになって印税生活に入る気満々である。
 もっとも、世の中そんなに甘くないことを知るのに半年もかからなかったが。
 なのに雑誌の世界に戻ることはまっぴら御免で、また「本」を出して売れなかったり、今度こそと「本」を出してまた売れなかったり、バカなことを繰り返し、失敗を重ねて今に至る。
 こうして、今、『CO・OPステーション』を開いて自分の舞台の記事をそこに見るとき、この何十年かの年月が甦り、甘酸っぱい思いがこみ上げる。
『神戸事件始末 瀧善三郎の最期』
 なんとか成功させたいものだ。
 
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2017年08月14日

伊佐山紫文22

『エミーリア・ガロッティ ミス・サラ・サンプソン』
レッシング作 田邊玲子訳 岩波文庫
 浄瑠璃や歌舞伎に「歴史物」に対する「世話物」があるように、ドイツ劇にも「市民悲劇」というジャンルがある。
 アリストテレスの『詩学』によって悲劇の主人公は神話や歴史上の英雄のみとされ、その説に基づいてヨーロッパ劇は作られてきたのだが、啓蒙の光を経て「市民」もまた悲劇の主人公たり得るのものとされた。
 まさに「市民悲劇」の誕生である。
 レッシングのこの二つの戯曲は、その「市民悲劇」の草分けにして代表作、初演当時は大成功を収めたらしいが、今となっては、大時代的な設定のわざとらしさと長たらしいレトリックにより、まず上演は不可能だろうと思われる。
 まず、役者がこれだけの台詞を憶えられない。
 それに、長い。
 私が計算するところ、この二作品ともに、上演時間は三時間を超える。
 現代の観客にそれだけの忍耐を強いることは出来ない。
 なら、駄作かと言えば、そんなことはない。
 シェイクスピアやラシーヌにも引けを取らぬ、とまでは言わないが、それなりの筋運びと構成で読ませる脚本にはなっている。
 人間造形も類型に堕してはおらず、生き生きとしている。
 女性の「純潔」がまだ意味を持っていた時代の記録としても、面白く読める。
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2017年08月14日

伊佐山紫文21

 昨日は「神戸事件」関連で、朝から夕方まで、関係する企業・団体を回ってきた。
 毎年の「瀧善三郎慰霊祭」みたいなものがやれないかと思って。
 けれど話をあちこちで聞くうち、慰霊の根幹に関わる部分にとんでもないねじれがあることがわかってきた。
 このままではどうしようもない。
 そもそも瀧善三郎の慰霊碑は切腹したお寺にあったのだが、それが空襲で焼け、ある企業の工場の敷地になり、その後、別のお寺に移され、今に至る。
 すべて数十年前の人々の善意によって、である。
 ところが、関係者の高齢化と、神戸市兵庫区の空洞化とで、その善意の根幹が揺らいでいる。
 最も問題となるであろう、法律的なことを言えば、慰霊碑の所有権と責任である。
 最初に作ったお寺はもはや亡い。
 引き継いだ企業は移転の費用を払って今のお寺に移した。
 今のお寺は期限付きで引き受けた。
 その期限が過ぎてもいまだに慰霊碑を引き受けている。
 ここでもし、慰霊碑が倒れ、怪我人が出た場合、だれがその責任を負うのか。
 これはもう「所有」と「占有」と「管理」と「責任」という、まるで司法試験の問題そのものの事態である。
 そのくらいシンプルでやっかいな問題が慰霊の根幹に横たわっているのだ。
 解決する手段は一つしかない。
 それは神戸市か国が、市有地か国有地に慰霊碑を移転することである。
 第一義的には、市長の碑文までよせ、慰霊碑の隣に建てている神戸市に責任があると思う。
 瀧善三郎の名誉回復をかねて、来年、150周年を記念して、事件の起こった三宮の、東遊園地公園に置くのが順当ではないか。
 広さの関係でそれが無理なら、神戸港を見下ろす六甲山でも良い。
 とにかく、このままではダメだ。
 慰霊碑の移転に向けて、少し動いてみようと思う。  
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プロフィール
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学生の頃から、ホールや福祉施設、商業施設などに呼ばれる形で歌ってきましたが、やはり自分たちの企画で自分たちの音楽をやりたいという思いが強くなり、劇作家・作詞家の伊佐山紫文氏を座付作家として私(浅川)が座長となり、「夙川座」を立ち上げました。

私たちの音楽の特徴は、クラシックの名曲を私たちオリジナルの日本語歌詞で歌うという点にあります。

イタリア語やドイツ語、フランス語などの原語の詩の美しさを楽しみ、原語だからこそ味わえる発声の素晴らしさを聴くことも良いのですが、その一方で、歌で最も大切なのは、歌詞が理解できる、共感できる、心に届くということもあります。

クラシック歌曲の美しい旋律に今のわたしたち、日本人に合った歌詞をつけて歌う、聴くことも素敵ではないかと思います。

オリジナル歌詞の歌は50曲を超え、自主制作のCDも十数枚になりました。

2014年暮れには、梅田グランフロント大阪にある「URGE」さんで、なかまとオリジナル歌詞による夢幻オペラ「幻 二人の光源氏」を公演いたしました。

これらの活動から、冗談のように「夙川座」立ち上げへと向かいました。

夙川は私(浅川)が関西に来て以来、10年住み続けている愛着のある土地だからです。
地元の方々に愛され、また、夙川から日本全国に向けて、オリジナル歌詞によるクラシック歌謡の楽しい世界を広げていきたいという思いを込めています。

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